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特集

シリーズ 地球のいのち
ワニ 幻の支配者

NOVEMBER 2009

文=メル・ホワイト

2億4000万年前に出現して以来、ワニは数々の困難をものともせず、命をつないできた。そして今、人類という“敵”と戦っている。

 米国フロリダ州ビスケーン湾を後にした1頭のアメリカワニが、ヨットが係留された運河を通り抜けて、マイアミ大学の構内にすみついたのは2008年夏。大学にワニが出現したのは初めてではないが、このワニほど有名になったものはいない。学長のドナ・シャレーラにちなんで、「ドナ」と女性の名前で呼ばれるようになったワニ(のちに雄であることが判明した)は、学生用パブの前庭の芝生に陣取って、日向ぼっこをすることがあった。そんなときは、ピクニックテーブルをいくつか移動することになったが、それ以上の面倒を起こすことはなかった。

 それから数カ月たった10月1日早朝、ドナは何者かに殺された。フロリダ州法と合衆国連邦法で、アメリカワニは絶滅危惧種に指定されていて、ワニを殺すのは違法行為だ。学生も教員もみな憤慨した。1カ月後、一人の男と十代の少年が逮捕された。伝えられるところでは、ワニの頭骨欲しさの犯行だったという。

 ドナの身に起きたことは、ワニ類全体の苦境を象徴しているように思う。ワニ類はクロコダイル科、ガビアル科(クロコダイル科に含める研究者もいる)、カイマン亜科を含むアリゲーター科からなり、23種が確認されている。数百万年に及ぶ地球規模の気候変動や地殻変動、予測不能な生態系の変化をくぐり抜けてきたワニたちは今、生き残りをかけて新しい問題に直面している。相手は私たち人間だ。

 1970年代、フロリダ州に生息していたアメリカワニは400頭を割り込んでいたと推定される。急激な人口増加に伴う開発により、アメリカワニは安全な生息域の多くを失うこととなった。さらには、皮革目当ての密猟者に殺されるもの、博物館での展示用に剥製(はくせい)にされるもの、動物園などで飼育するため生け捕りにされるものが後を絶たなかった。

 だが、その後の保護対策のおかげで、州内の個体群は回復し、今では約2000頭を数える。「アメリカワニの管理に、難しい科学技術など必要ありません」と話すのは、フロリダ州クロコダイルレイク国立保護区の責任者スティーブ・クレット。「生息域を保護して、殺されないようにしてやれば、数は増えます。今、問題になっているのは保護地域の狭さです。アメリカワニが増えても、すむ場所がないのです」

 ドナの場合、安住の地を探してたどり着いたのが都市部だったというわけだ。そこはすむべき場所ではなかったが、ほかにましな選択肢がなかったのだろう。

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