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シリーズ 地球のいのち NOVEMBER 2009 |
![]() 陸上の恐竜と海中の巨大生物がいなくなったのだから、ワニが地球の支配者になっても不思議ではなかった。しかし、彼らの前に立ちはだかる動物がいた。着々と進化を遂げていた哺乳(ほにゅう)類だ。やがて、さまざまな姿に進化を遂げていたワニの多くが絶滅し、短い脚に四角い胴体をしたワニだけが生き残ることとなった。 ワニ vs 人間 「最近になって、皮革が目当ての違法な狩猟が減少しています」と、野生生物保護協会のワニ専門家であるジョン・トービヤナソンは話す。合法的な管理飼育や管理捕獲を行うようになってから、個体数が増えた種もある。「20年前には15~20種が絶滅危惧種に指定されていましたが、今では7種です。いずれも狩猟ではなく、生息域の喪失が原因です」 ヨウスコウアリゲーターやフィリピンワニは、農地や都市部の拡大によって従来の生息域を追われ、自然の状態で生きるのは難しくなっている。また、保護対策によって個体数が増加した種も、規模の違いこそあれ、ドナと同じ問題に直面している。人間との接触だ。そして、しばしば問題を引き起こす。 インドガビアルは、かつてはパキスタンからミャンマーまでの広い範囲に生息した細長い口吻(こうふん)をもつワニで、20世紀半ば、その生息数は著しく落ち込んだ。しかし、密猟が減って保護地域が確立されると、1980年代から90年代にかけて個体数は回復した。窮地を脱したかと思いきや、最近になって再び激減していることが調査により判明した。 都市部から遠く離れた場所では、絶滅の危機とは無縁のワニもいるし、アメリカアリゲーターのように劇的な回復を果たした種もある。しかし、現在でも、ワニの生息地に目をつける人間は、農家からゴルフ場の設計者まで大勢いるのは確かだ。また、ペットや人間を襲う種もいるため、ワニが人間から歓迎される存在であるとは言いがたい。人間がワニの生息環境に手を加え続ける限り、ワニが安心して生息できる日は訪れないかもしれない。 |