/2009年11月号

トップ > マガジン > 2009年11月号 > 特集:古代エジプト 王者のペット


定期購読

ナショジオクイズ

キリン科の動物は次のうちどれ?

  • シマウマ
  • オカピ
  • トムソンガゼル

答えを見る

ナショジオとつながる



特集

古代エジプト
王者のペット

NOVEMBER 2009

文=A・R・ウィリアムズ 写真=リチャード・バーンズ

イラにされ、棺に納められたイヌやネコ。古代エジプトの墓に埋葬された動物たちが、王国の知られざる姿を今に伝える。

 巨大な墓がエジプト中部イスタブル・アンタル村の近くで発見されたのは、1888年のことだった。そこに埋葬されていたのは人間ではなかった。膨大な数のネコのミイラが、穴の中から発掘されたのだ。最も保存状態の良いものは村の子どもたちが観光客相手にみやげ品として二束三文で売ってしまい、残りはまとめて肥料業者に売り払われた。

 あるときは18万匹、重さにして実に17トンものミイラが、船一隻に積み込まれて英国リバプールまで運ばれて肥料として畑にまかれた。

 19世紀後半の当時、豊富な資金を元手に、探検隊は広大な砂漠を掘り返しては、王家の墓やそこに納められた輝く黄金、美しく彩色された仮面や棺を発掘した。その際に出土したおびただしい数の動物のミイラは、貴重な遺物を見つける上で邪魔なものでしかなく片っ端から捨てられていた。動物のミイラを調査しようという者はほとんどいなかったし、その重要性も一般に認識されていなかったのだ。

 それから100年で、考古学は宝探しのようなものから、より科学的な学問へと変わった。今では考古学者たちは、その当時の一般の人々の生活を伝える詳細な点を知ることにこそ、遺跡の価値があると認識している。動物のミイラは、重要な価値ある発見なのだ。

 「当時の日常生活を知る上で、動物のミイラは有力な手がかりです」と、カイロのアメリカ大学でエジプト学の教授を務めるサリマ・イクラムは言う。「動物のミイラは、古代エジプト人のペットや食べ物のことから、死、宗教まで、あらゆることにかかわります」。イクラムは古代の動物の遺骨を研究する動物考古学が専門で、高度な技術と細心の注意を払ってミイラにしたネコなどの動物を研究する新しい分野を確立した。エジプト博物館に所蔵されたまま放置されていた動物のミイラの大きさを正確に測定し、亜麻(あま)布の包帯にくるまれたミイラをX線で撮影した。結果は一覧にまとめられ、動物のミイラの展示室が設置された。「見学に来た人は、動物のミイラを見て、ファラオも自分と同じようにペットを飼っていたと分かります。すると5000年以上の歳月は一気に縮まり、古代エジプト人も自分と同じ人間だと実感できるんです」

 動物のミイラは貴重な遺物で埋めつくされた博物館の中でも、最も人気のある展示の一つになっている。ガラスケースの向こうには、亜麻布にくるまれたネコや、彫刻を施した石灰岩の箱に納められたトガリネズミ、金箔やビーズで飾られた布で覆われたオヒツジなどが並ぶ。体長5メートルのごつごつした背中のワニの口の中には、赤ちゃんワニのミイラが何体か納められている。緻密な装飾を施した布に包まれたトキ、タカ、魚、小さなコガネムシ(フンコロガシ)とその餌となるフンのミイラまである。

1Next

年間購読のお申込はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー