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インドの利水大作戦

NOVEMBER 2009

文=サラ・コルベット 写真=リンジー・アダリオ

になると井戸涸れに悩まされるインド内陸部。地面に吸収される雨水を増やすため、ある村で画期的な取り組みが始まった。

 インドの農民は、天気の話ばかりしている。5月になると、大地はかまどのように焼けつき、畑はどこも黄色く干からびる。井戸は涸(か)れ、それをあざ笑うように灼熱の太陽が照りつける。そんな時、農民たちが話題にするのが、いつ、どのようにして夏のモンスーンが到来するかということだ。ただ、ことあるごとに話にのぼるわりには、確実性に欠ける話題だ。

 モンスーンは例年6月初めにやってきて、それから4カ月弱の間に、この国の年間降水量の4分の3以上に当たる雨を降らせる。農民たちの表現を借りれば、モンスーンは“最初はシカのようにやさしく始まり、やがて怒りくるったゾウになる”という。ただし、ゾウで始まってシカになることもあるし、“ニワトリのように”先の読めない困った降り方をすることもある。要するに、誰にも予測できないのだ。それでも誰もがモンスーンを話題にせずにいられない。

 2008年5月中旬、インド西部の大都市、ムンバイからおよそ160キロ北東にあるサティチワディ村では、ある家族が総出で村の女神をまつる丘の上の寺院に参拝していた。雨乞いのためだ。気温は41℃。マハーラーシュトラ州の奥地にあるこの農村には、全83世帯が暮らしているが、もう7カ月もの間、雨らしい雨が降っていない。

賭けの季節

 1年のうちこの時期は、インド全土が雨をひたすら待ちわびる。首都ニューデリーでは熱暑のせいで電力供給が制限され、北部の各地では乾ききった空気が砂嵐を巻きおこした。地方の高速道路では、井戸が涸れた村々に政府が派遣する給水車が渋滞を起こしていた。

 モンスーンの兆しが現れるのは、そのころだ。ラジオの天気予報が、インド南東のずっと沖合いにあるアンダマン諸島上空に、ようやく期待の雨雲が発生したことを告げていた。

 いよいよインドの農家が、年に一度の大きな賭けに出る時がきた。モンスーン到来までの数週間に、多くの農家は借金をしてまで肥料や雑穀の種を購入する。雨が降る前に種まきを終えておかなければならないからだ。

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