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特集

世界遺産
ツィンギ・デ・ベマラ

NOVEMBER 2009

文=ニール・シェイ 写真=スティーブン・アルバレス

ンド洋に浮かぶマダガスカル島。針のようにとがった石灰岩が林立する、世にも奇妙な“石柱の迷宮”に足を踏み入れた。

 照りつける太陽にあぶられた岩肌。おどおどした様子で移動していたトカゲが、何者かに狙われている気配を感じたのか、ぴたりと動きを止めた。辺りはひっそりと静まりかえり、鋭くとがった針のような岩山が、空に向かって無数にそびえている。次の瞬間、眼下の谷からオウムが甲高い鳴き声をたてながら飛んできて静寂を破った。

 トカゲがすっと動いた。爬虫類(はちゅうるい)学者のヘリー・ラコトンドラボニーは腕を伸ばすと、あっという間にそのトカゲを捕まえた。そして握った指を少し開き、手の中の獲物を見つめて言った。

 「新種のトカゲでしょう」

 マダガスカル島西部のツィンギ・デ・ベマラ国立公園・厳正自然保護区に滞在した数日の間に、ラコトンドラボニーは2、3度、同じような発見をしていた。マダガスカルは、生息する生物の90%がほかの土地では見られない固有種という、生物多様性で知られる島だ。なかでも、1990年に世界遺産に登録されたこの保護区は、およそ1500平方キロにわたって広がる区域のほとんどが未踏査で、それ自体が孤島とも言える。「ツィンギ」と呼ばれる、鋭利な岩山が連なった地形が人間や外敵の進入を阻む、いわば“生物を守る砦(とりで)”なのだ。

 太古のジュラ紀に巨大な石灰岩台地だった土地が、長い間に雨や地下水などによって浸食され、ナイフの刃のように鋭い岩山や深く細長い谷、湿気の充満した洞窟をつくり出した。人間が容易に踏み入ることのできない複雑な地形は、さまざまな動植物にとって、外界から隔絶された安全な生息地となった。ここで新種の生物が頻繁に見つかるのはそのためだ。

 スティーブン・グッドマンは、20年間マダガスカル島で暮らしながら研究を続けている生物学者だ。彼はこの地域を「楽園の中の隠れ家」と呼んでいる。まるでダーウィンら生物学者が活躍した19世紀のように、マダガスカルでも特に新種の生物がよく発見されるからだ。

 「谷から谷へ移動するだけで、さまざまな生物と出合います」と、グッドマンは言う。「ツィンギは地球上でも有数の、希少生物の宝庫です。足を踏み入れて、辺りを見回すだけでわかるでしょう」

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