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知られざるサハラ

OCTOBER 2009


砂漠に残る人間の歴史

 フェザン地方には、数千年にわたって、気候の変化に必死であらがい、過酷な環境に適応してきた人間の歴史がある。この地方そのものがタイムマシンなのだ。詳細に調べれば調べるほど、過去は生々しくよみがえり、これまで私たちが信じてきた“定説”は打ち砕かれる。

 過去とは、気候変動や大規模な人口移動、国家の盛衰が繰り返されてきた記録であると、私たち現代人はしぶしぶ受け入れている。そして、現在があたかも歴史の最終章であるかのように考える。しかし、サハラを訪れる誰もが対峙するのが、気が遠くなりそうに壮大な歴史物語で、それを前にすると、現在という章が実に薄っぺらで、もろいものかを痛感する。

 今回、マッティングリーが調査で訪れたウーバーリー砂漠には、信じられないことに、宝石のような小さい湖がいくつもある。紫色やオレンジ色をしたこれらの湖は、地下水が現在よりも地表近くに存在した時代の名残だ。今では想像もつかないが、20万年前、ここには日本の本州とほぼ同じ広さのメガフェザン湖があった。当時は雨が多く、砂漠の真ん中を流れていた幾筋もの川の跡も発見されている。

 かつての河川の痕跡をどのように見つけるのか? 答えは宇宙からだ。マッティングリーが率いる調査チームは、人工衛星がとらえたレーダー画像をもとに、古代の湖や泉の存在を示す鉱物の残余物がある場所を特定し、現地へ向かう。こうして調査した場所からは、石器や矢じり、たき火跡、墓所など人間が居住していた証拠が次々と見つかった。

 この地域に住んでいた最古の現生人類は、草原で狩猟と採集を行っていたとされる。今から13万年ほど前だ。約7万年前に降雨量が減ったため、人々は姿を消したが、その後、雨が降るようになると、再びこの地に住むようになった。気候変動に伴って、アフリカ北部で繰り返された人口移動を、研究者たちは「サハラ・ポンプ」と呼んでいる。フェザン地方には、ライオンやゾウ、サイなどを描いた岩絵が点在するが、それらは、こうした動物が生息できるほど、サハラが湿潤だったことを伝える証拠だ。

 湿潤な時代が最後に終わりを告げたのはおよそ5000年前。このときはそれまでと違い、雨が降らなくなり、湖が消え、大地が砂漠に覆われた後も、人間はこの地にとどまった。残された岩絵からは、人々の生活様式が狩猟から牧畜へと移っていたことが見て取れる。やがて、社会が形成され、町ができ、農耕が始まった。ガラマントと呼ばれる文明の誕生である。

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