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知られざるサハラ

OCTOBER 2009

文=チャールズ・ボウデン 写真=ジョージ・スタインメッツ

ビアのフェザン地方は、太古の時代より文明が築かれてきた砂漠のオアシス。砂と岩が描く、知られざる絶景を空からとらえた。

 「深遠なる時間」と呼ばれる場所から、古代の風が吹いてくる。サハラでは砂丘と青い空が果てしなく広がり、地獄のような灼熱が立ち上る。その広大さに目を奪われると、この砂漠が地球の歴史を記録した場所であることをうっかり忘れそうになる。ここには遠い過去が今も息づき、乾いた風や焼けつく暑さ、そして、砂と岩がその物語を教えてくれる。それは、何度となく繰り返されてきた気候の大変動と、それに翻弄された人間の歴史だ。

 先史時代に私たちを連れて行ってくれるのは、考古学者であるデビッド・マッティングリーが率いる「砂漠大移動プロジェクト」だ。プロジェクトの研究者たちは、言ってみれば“時間旅行者”で、四輪駆動車でサハラ砂漠を駆けめぐり、太古の人間の痕跡を探す。空気圧を下げて接地面を大きくした特製のタイヤを装着すれば、高さ30メートルの砂丘も一気に登りきることができる。このタイヤのおかげで、砂漠での活動範囲が飛躍的に拡大した。

 リビア南西部に位置するフェザン地方は、サハラ砂漠の心臓部と言える。一帯には砂の海が広がり、ワジと呼ばれる涸れ川が幾筋も走り、山や台地がそびえる。そして、この場所は謎に満ちている。紀元前500年から紀元500年ごろまで、10万人ほどと推定される人々がこの地で農業を営み、豊かな暮らしを送っていた。年間降水量がせいぜい数十ミリで、全く雨が降らない年も多いこの土地でだ。「サハラ砂漠中央部の超乾燥地帯に、それだけ多くの人間が暮らしていたとは驚きですよ」とマッティングリーは話す。英国レスター大学の教授である彼は、いまや砂漠の“奴隷”といったところだ。「リビアの調査を始めて30年ですが、砂漠の景観には最初から魅了されっぱなしでした」。彼に限らず、砂漠のまばゆい光と見渡す限りの地平線の虜になった者はたくさんいる。この地に清澄な美しさを見いだすのだ。

 リビアは広大な国で、面積は日本の4.7倍ほどもあり、約600万人の人口のほとんどが地中海沿岸に集中している。だが、この国を正しく理解したいならば、海に背を向けて南を見なければならない。リビアの国土の95%は乾燥地帯で、20%が砂丘だ。この国には、年間を通して流れる川はない。リビアのサハラ砂漠では、57.8℃という暑さが記録されたことがある一方、冬の夜には凍りつくほどの寒さになるのだ。

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