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特集

揺れるインドネシア

OCTOBER 2009

文=マイケル・フィンケル 写真=ジェームズ・ナクトウェイ

界で最も多い2億人のイスラム教徒を抱えるインドネシア。民主化をめざす国は、イスラム原理主義勢力にどう立ち向かうのか。

 ドアを開けたのはバシル本人だった。

 武装した護衛もいなければ、隠れようとするそぶりもない。ここはインドネシア・ジャワ島中部の高地にあるングルキ村だ。アブ・バカル・バシルは自ら資金を出して設立に協力した寄宿学校の敷地に建つ、質素な平屋建ての家に住んでいる。年齢は71歳。やせこけた体に白いあごひげを生やし、金縁眼鏡の奥の黒い瞳には生命力が満ちている。

 バシルはイスラム過激派組織ジェマ・イスラミアの精神的指導者とされる人物だ。ジェマ・イスラミアは、2002年にバリ島のディスコで起きた爆弾テロ事件を含め、過去10年間に少なくとも5、6件の爆弾テロに関与したとみられている。だが本人はこうした暴力行為との関係を否定しており、事件とのつながりはいずれも立証されていない。バシルはこれまでに2度禁固刑を受けているが、罪状は爆弾テロとは直接関係のない軽い罪で、刑期は合わせて4年に満たない。

 それでも彼が設立したイスラム教系学校が、東南アジアにイスラム国家を樹立しようとする過激派ネットワークの中心にあったことは明らかだった。数人の卒業生は、大きな爆弾テロに関与した罪で有罪判決を受けているのだ。

 そして数百人から、ことによると数千人以上が死亡した事件や、主流のスンニ派から“逸脱”したムスリム(イスラム教徒)への攻撃。これらの暴力の背後にバシルの教えがあることはほぼ間違いない。玄関のドアを開けたまま、彼は公用語のインドネシア語でこう言った。「どうぞ中へ。ジュースでもいかがですか?」

 バシルは長くゆったりとしたシャツと白い縁なし帽、そして大きな腕時計を身につけていた。

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