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巨木の森と生きる OCTOBER 2009 特集ラインアップ |
![]() 文=ジョエル・K・ボーン Jr. 写真=マイケル・ニコルズ 樹高100メートルを超える世界一高い木、セコイア。その森が広がる米国西海岸3000キロを縦走し、林業と森林保護の未来を考える。
セコイアの巨木
マイケル・ニコルズはカリフォルニアでセコイアの木全体を撮影する史上初の試みに挑んだ 木を切るべきか、切らざるべきか――。そんな論争を越えた、新たな森づくりとはどんなものか。未来の森の姿を求めて2900キロの道のりを歩き始めた男がいる。 彼の名は、J・マイケル・フェイ。今から10年ほど前、アフリカに残された手つかずの森林地帯3200キロを徒歩で横断する「アフリカ徒歩横断」を敢行した人物だ。その模様は本誌2000年10月号、2001年3月号、同年8月号でお伝えしたから、覚えている読者もいるかもしれない。 米国の環境保護団体「野生生物保護協会」の自然保護活動家で、ナショナル ジオグラフィックの協会付き研究者でもあるフェイは、30年間アフリカの森林保全に尽力してきた。50歳をゆうに超えた今、彼が何よりも大きな関心を抱いているのが、米国西海岸にだけ生育するスギ科の木、セコイアだ。レッドウッドとも呼ばれ、樹高100メートル以上にもなる世界有数の巨樹である。 フェイがこの木に興味をもったのは、アフリカ徒歩横断を終えて何年か後のことだ。カリフォルニア州の州立公園を訪れたとき、彼は輪切りにして展示されていたセコイアの幹に目を留めた。直径1.8メートルの輪切りは垂直に立ててあり、年輪に西暦と出来事を記したラベルが張ってある。中心部の近くには、「1492年 コロンブスの新大陸到達」とあった。 「端から8センチくらいの場所には、『1849年 ゴールドラッシュ』と書かれていた」とフェイは話す。「それを見て気づいたんだ。われわれは年輪の最後の数センチに当たるわずかな歳月の間に、2000年もの歴史をもつ森林を壊滅寸前まで追いやってしまったのだとね」 世界屈指の巨木がそびえる西海岸の森。その破壊の歴史と森林利用の現状を自分の目で確かめようと、フェイは2007年秋に全長2900キロの徒歩縦断を敢行することにした。カリフォルニア州中部の海岸地帯ビッグサーから、世界遺産のレッドウッド国立公園を経て、オレゴン州との州境を越える辺りまで、セコイアの森が残る山々を歩く。そのなかで、木材生産をできる限り確保しながら、森林が生態系や地域社会にもたらす恩恵を最大限に生かす方法がないか、じっくり探ってみようと考えたのだ。 セコイアの森でそれが可能なら、短期的な利益のために伐採されている世界のあらゆる森林も、その方法で保全できるはずだ。フェイは、アフリカ徒歩横断のときと同様、11カ月に及ぶ踏査の期間中、写真を撮り、記録を残し、森林や渓流、そこにすむ生き物の現状について、詳細なデータをとった。 |