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特集

ニューヨーク今昔物語

SEPTEMBER 2009


 1609年にタイムズ・スクエアに生息していたビーバーについて考えてみよう。そのビーバーの首根っこをつかんで“ミューア・ウェブ”から引き上げてみると、ビーバーにつながる糸は流れのゆるやかな小川や、ビーバーがかじるポプラの木立、巣づくりに使う泥や小枝などに結びついていることが分かる。さらにその糸は、ビーバーを捕食するボブキャットやクマ、オオカミに結びつき、ビーバーと一緒に池の自然環境をつくるカエルや魚、水生植物にも結びついている。「ビーバーは人間同様、景観を築く役割を担っていたのです。ビーバーは川の流れをせき止めて樹木を枯らし、枯れた樹木はキツツキを呼び寄せ、キツツキは樹木を突いて穴をあけ、アメリカオシドリはその穴をすみかにします」

 データベースの作成を終えると、サンダーソンの研究チームは、マンハッタン島のきわめて詳細な生物分布図を作成して、1300種ほどの生物の存在を確認し、ほかの生物やその生息地との依存関連が少なくとも8000件あることを明らかにした。この手法は、イエローストーン国立公園とその周辺や、アフリカ・コンゴの森林、モンゴル東部の草原地帯など、現存する原生の自然分析にも応用できる。一つの土地と、そこに生息する生物との相互依存関係を示すモデルが確立できれば、科学者たちは気候変動や狩猟など、自然環境を損なう要因をより正確に予測できるようになる。

 「マンナハッタ・プロジェクト」の次の段階は、これまで入手したデータをすべて利用して、リアルな3D画像を作成することだ。当初から、サンダーソンの目的は、現在のニューヨーク市内の任意の場所の400年前の姿を再現することだった。例えば、マジソン・スクエア・ガーデン前の7番街のタクシー乗り場は、かつては森の外れに広がる沼地だった。

 画像作成の専門家のマークリー・ボイヤーが、3D画像作成ソフトを駆使して、ミューア・ウェブのデータベースを基に、デジタル合成した原初の景観に、カシやヒッコリーの木立、小川、池、沼地などを適切に組み合わせて描き加えた。インターネット上の「The Mannahatta Project(http://themannahattaproject.org)」では、ヨーロッパの開拓民が到来する以前のマンハッタン島各地の景観を見ることができる。

 「マンナハッタ・プロジェクト」はいまや歴史学者や考古学者、地理学者、植物学者、動物学者、イラストレーター、WCSをはじめとする自然保護団体の活動家など50人以上が参加する。 

 ハドソンがマンハッタン島を初めて探検して400年目にあたる今年、サンダーソンは、この探検以前の原初のマンハッタン島に、人々が関心をもってほしいと願っている。「自分たちが住んでいるこの土地に、かつてみごとな生態系が広がっていたことを、すべてのニューヨーク市民に知ってほしいのです。ニューヨークは、単に芸術や音楽、文化、コミュニケーションの殿堂なのではなく、少し目を凝らしてみれば、驚くべき自然の宝庫でもあるのです」

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