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特集

ニューヨーク今昔物語

SEPTEMBER 2009


 今ではサンダーソンは、マンハッタン島のどこに立っても、1782年当時のおおよその景観を想像できる。ニューヨーク公共図書館の前を歩くと、5番街はゆるやかな上り坂になる。

 「英国軍本部地図」の作成にのめり込んだサンダーソンは、さらに古い時代の地図をつくりたくなった。さらに時代をさかのぼって1609年当時のマンハッタン島を再現してみたいと考えたサンダーソンは、道路や農場、とりでなど、開拓者や軍隊が新たに付け加えたすべての要素を、デジタル版の古地図から取り除いた。その結果できあがったのが、海岸線や丘陵地、がけ、地表、河川、池など、基本的な地形だけで構成される地図だ。

 現在、サンダーソンは同僚とともに特定の土地を、地形など最も基本的な要素から再構成し、そこに生息していたと考えられる動植物を当てはめる作業に取り組んでいる。

 サンダーソンらは、土壌や降水量などを手がかりに、樹齢の古い森林や湿地、平原など、マンハッタン島に存在していたと思われるさまざまな生態系を列挙する作業から始めた。寒冷な土地の植生と温暖な土地の植生が交じり合うマンハッタン島は、トウヒなどの針葉樹だけでなく、マグノリアなどの広葉樹も自生し、近隣からさまざまな渡り鳥が飛来し、夏にはメキシコ湾流に乗って熱帯性の魚類までやって来た。サンダーソンらが列挙した生態系の数は、全部で55種類に達した。「驚くほど生物多様性に富んだ土地です。原初の姿をとどめていたら、マンハッタン島は、米国を代表するヨセミテやイエローストーンのような国立公園になっていたかもしれません」と、サンダーソンは語る。

生物多様性に満ちた生態系を再現

 マンハッタン島の生態系を明らかにすると、次にサンダーソンらはそこに生息していた野生動物を想定し、生物ごとに生息に欠かせない条件を明らかにしていった。例えばミューレンベルグイシガメは、湿原と昆虫、甲羅干しをするための日差しを必要とし、ネコ科のボブキャットは餌にするウサギと子育て用の巣穴を必要とする。「『この生物には何が必要か?』と絶えず自問し続けました」と、サンダーソンは語る。生物ごとにリストを積み上げたデータベースを構築するうちに、各生物とその生息地、マンハッタン島の生態系が結びついたネットワークができあがった。

 サンダーソンはこのネットワークを、米国の自然研究家ジョン・ミューアにちなんで“ミューア・ウェブ”(ミューアのクモの巣)と名付けた。かつてミューアは、「私たちが自然界で拾い上げるものはすべて、ほかのものとつながりあった、目に見えない無数の糸で宇宙の万物と結びついている」と述べている。

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