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特集

ニューヨーク今昔物語

SEPTEMBER 2009


豊かな自然にあふれたマンハッタン島

 かつてのマンハッタン島は、クリやカシ、ヒッコリーの大木がそびえ、あちこちに塩沼(潮水のたまった海辺の沼)や草原が広がり、シチメンチョウやヘラジカ、アメリカグマが生息する、原生の大自然だった。「このうえなく心地よく探検できる土地」と、ハドソンは報告している。全長21キロの細長い島の両岸には延々と砂浜が広がり、ここで先住民はハマグリやカキなどの貝類をふんだんに採った。マンハッタン島には総延長が105キロ以上に達する河川がいくつも流れ、その多くに1頭ないしは2頭のビーバーが生息していた。

 「現在の景観からは想像もつきませんが、マンハッタン一の繁華街であるタイムズ・スクエアは、400年前はカエデの森が茂る沼地が広がっていました」。ニューヨーク7番街の交差点で信号待ちをしながらサンダーソンは言った。

 「あそこにはビーバーのすむ沼がありました」かたわらをバスが騒音をたてて通り過ぎていくなか、彼はそう語った。「シカやアメリカオシドリをはじめ、川辺で餌をとって暮らす野生動物にとっては申し分のない生息地でした。カワマスやウナギ、クサカワカマス、オオクチバスなどの魚類がいたはずです。当時はずっと静かな場所だったのは間違いありません」

 1999年、ニューヨークの古地図をまとめた大判の書籍を購入した晩に、サンダーソンはこのマンナハッタ・プロジェクトを思いついた。「昔と比べると、マンハッタン島の景観は一変してしまい、かつての風景など想像もつきません。現在のマンハッタンで動物といえば、人間かイヌくらいです。公園を除けば樹木や植物すら見当たりません。なぜこんな土地になってしまったのでしょう」

 1枚の古地図が、とりわけ彼の興味を引いた。それは1782年か83年に制作された、多色刷りの美しい地図で、島全域に点在する丘や小川、沼地、道路、果樹園、農場が描かれていた。当時の地図でこれほど細部が詳しく表示されているものは、ほかになかった。長さ3メートル、幅1メートルほどのその地図は、英国から米国が独立を勝ち取ったアメリカ独立戦争(1775-83年)で、ニューヨークを占領していた英国軍が作成したものだった。

 のちに「英国軍本部地図」と呼ばれるこの地図には、島の地誌がきわめて詳しく書き込まれていた。英国軍の将校たちはマンハッタン島の防備計画を立てるためにこうした情報を必要としていたのだ。

 18世紀に作成されたこの地図に、現在のニューヨークの市街地図を重ね合わせたら何が分かるだろう。何か見えてくるものがあるかもしれないと、サンダーソンは自らの疑問に対する答えを求めて、この地図に表示されていて、今も存在する場所を訪れてみた。

 例えば、ロワー・マンハッタン(マンハッタン島南部)のトリニティ教会は、17世紀末に建てられた。この教会内の墓地の場所は、「英国軍本部地図」にも、現在の市街地図にも示されているので、サンダーソンは、墓地の位置をGPS(全地球方位システム)で確認し、“架空のピン”をこの2枚の地図の該当個所に立て、古地図の“デジタル版”の作成に取り組んだ。200カ所ほどの場所についてこの作業を繰り返した結果、現在の市街地図と照合した「英国軍本部地図」を作成した。

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