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特集

サケの楽園
カムチャツカ

AUGUST 2009

文=デビッド・クアメン 写真=ランディ・オルソン

シア極東のカムチャツカ半島は、豊かな自然が残るサケの王国。だが近年、乱獲やイクラ目当ての密漁で生態系が脅かされている。

 北太平洋に突き出たカムチャツカ半島。ここはロシア北東の最果ての地だ。ユーラシア大陸からぶら下がるような形をしたこの半島は、内陸に灰色の岩肌がむき出しの火山がそびえ、雄大な山脈が南北に走る。頂上には夏でも雪が残り、なだらかな斜面は亜寒帯特有の針葉樹林に覆われている。

 カムチャツカ半島には手付かずの自然が残り、ヒグマやオオワシといった野生動物は、脂ののった魚をたっぷり食べて栄養をとる。カムチャツカ地方に暮らす35万人の生活も同じ魚に大きく依存している。つまり、この魚を抜きにしてカムチャツカを語ることはできないのだ。

 この魚とは、タイヘイヨウサケのことである。タイヘイヨウサケは、太平洋を主な生息地とするサケ属の総称で、マスノスケ、ギンザケ、ベニザケ、カラフトマス、シロザケ、サクラマスの6種が含まれる。

 また同時に、カムチャツカなくしてタイヘイヨウサケの現状と将来を理解することはできない。地球に生息する野生のタイヘイヨウサケのおよそ20%がカムチャツカで産卵するからだ。

 カムチャツカ半島は面積が米国カリフォルニア州よりも広いが、舗装道路の総延長は300キロしかなく、人口の半分が南東岸に位置する首府ペトロパブロフスク・カムチャツキー(以下、ペトロパブロフスク)に集中している。首府が面する湾は深く入り込み、向かいにはロシア最大の原子力潜水艦基地、ルイバチーがある。半島全体が軍事地域として立ち入りが制限されていた旧ソ連時代から、ペトロパブロフスクはこの軍事基地を中心に発展してきた。

 現在でも、首府を除くほとんどの地域へは輸送用ヘリコプターでもないと訪れることができない。それでも一応、ところどころ通っている砂利道をたどってブイストラヤ川の上流にさかのぼっていくと、中央山脈南部の山中に低層の建物群が出現する。ここがマルキ孵化場だ。

 カムチャツカ半島での孵化事業は帝政末期の1914年に始まったが、このマルキ孵化場ができたのはわずか30年前。建物の入り口近くにあるラウンジには、「カムチャツカは自然が創り出した天然のサケ養殖場だ」とロシア語で書かれたポスターが張られていた。

 その理由も列挙されている。永久凍土層がほとんどなく、雨量が豊富で、水はけが良いこと―。カムチャツカ半島を流れる河川がユーラシア大陸の水系から切り離されていて、タイヘイヨウサケの競争相手や捕食者となるほかの淡水魚が少ないことも関係している。ポスターの言葉は正しい。地形と生態系のどちらにおいても、ここはサケの楽園なのだ。

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