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特集

シリーズ 地球のいのち
華麗な生物の擬態

AUGUST 2009


 擬態のテクニックには、いくつかの種類がある。まず、捕食者や獲物(多くの場合は両方)に見つからないようにするカムフラージュ(隠蔽擬態)。「エサ」のふりをしてだます生物もいる。例えばアンコウの仲間は頭部を振動させ、口の上の突起物を揺らして蠕虫に見せかけて他の魚をおびき寄せる。マメズタラン属(バルボフィラム)というラン科の植物は、肉の腐敗臭によく似た臭いと形状を持つ紫色の大きな花を咲かせ、死体にたかるツヤホソバエを引き寄せる。ツヤホソバエが花にとまると、脚に花粉が付着し、繁殖を手助けしてもらっている可能性がある(あくまで可能性にすぎないが)。

 擬態生物が五感のどれに訴えかけるかは、だます相手はどの感覚が鋭いかによって異なる。もっぱら視覚に頼る人間などの霊長類には、敵や獲物の目を欺く視覚上の擬態が効果的だ。例えば川辺で暮らすカエルの仲間は、川底にうずくまって丸くなり、周囲の丸い石に同化して危険を避ける。

 なかには音や声を模倣する生き物もいる。ヒトリガの仲間は、コウモリが嫌う有毒なガの出す超音波をまね、コウモリの攻撃を防ぐ。

さまざまな擬態で生き抜く

 嗅覚の擬態もある。ナゲナワグモの一種は、ガの雌が出す性フェロモンとそっくりな強い匂いを分泌して、同じ種の雄を引きつける。さらに触感の擬態まである。ターマイトボールという菌類の一種は、シロアリの卵の形と質感をまねることで、暖かく適度な湿気があり、安全なシロアリの巣の内部に入り込んで暮らす。

 研究者のレスリー・ガールジャーシェンズとジョセリン・ミラーは最近、米国南西部の砂漠地帯に生息するツチハンミョウの一種と単独性ハナバチの仲間に関する論文を全米科学アカデミー紀要に発表した。

 ツチハンミョウの雌は、まずハナバチが食事をする草の生えた一画に卵を産みつける。卵から同時に孵化した数千匹の幼虫は、すぐに体を寄せ合って密集陣形を取り、この状態で草の葉を移動する姿は、ハナバチの雌にそっくりだ。幼虫の群れは、やがてハナバチの雌の性フェロモンに似た匂いまで出し始める。

 交尾の相手がいると思い込んだ雄バチが引きつけられ、この幼虫の群れの上に乗ると、幼虫の大群は一斉に雄バチの体に乗り移る。雌と出会えなかった雄のハナバチは、ツチハンミョウの幼虫を体に乗せていることに気づかないまま、別の雌を求めて飛び立つ。この雄バチが本物の雌バチを見つけて近づくと、幼虫の群れはすぐに雄から雌に乗り移り、食べ物がたっぷりあるハナバチの巣に連れて行ってもらうというわけだ。

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