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特集

ニッポンの恐竜時代

AUGUST 2009

文=芳尾 太郎 写真=田中 良知 イラスト=山本 匠

ンバリュウをはじめ、日本で恐竜化石が次々に見つかっている。ときは白亜紀の前半。彼らはどんな土地でどんな風に暮らしたのか。

 「これ何や?」
 声を上げたのは、発掘初心者の村上だった。

 2006年8月7日、兵庫県の丹波市は快晴。化石採集家の足立洌(当時63歳)は、学生時代の友人である村上茂を誘って、篠山川の河原へ化石採集に来ていた。そこは篠山層群と呼ばれる約1億3000万年前の地層で、ごつごつした岩が切りたつ河岸からは、昆虫や貝の巣穴化石が見つかる。足立は20年以上、趣味でこうした巣穴化石を採集していた。

 午後2時過ぎの暑い盛り。村上は、赤褐色の岩壁から少しでっぱった灰色の石に目を留めた。化石に慣れていない村上だからこそ、気になったのかもしれない。周囲を少し掘ってみると、灰色の石はどうやら奥まで続いている。

 これは、もしかして…。

 二日後、足立と村上は早朝から発掘を始めた。食事も忘れて昼過ぎまで掘り進めたところ、合わせて60センチほどもある棒状の化石が姿を現した。二人はその足で、三田市にある兵庫県立人と自然の博物館の学芸員、三枝春生を訪ねた。

 「恐竜の骨に間違いありません」
 即答だった。

 三枝は振り返る。「篠山層群は、恐竜が見つかっていいはずの地層でした。だから、その化石を見た瞬間に『ついに出たか』と」

 それは、竜脚類と呼ばれる恐竜の肋骨だった。竜脚類は4本足で歩く、首の長い大型恐竜で、体重は10トンを下らない。その後、三枝らが中心になって大規模な発掘を進めると、連なった尻尾の骨や十数本もの肋骨、脳の一部など、全身のおよそ4分の1におよぶ骨格の化石が見つかった。「タンバリュウ」の愛称が付けられ、テレビや新聞をにぎわせた。

 2009年1月には3度目の大規模な発掘事業が行われ、今も掘り出された化石のクリーニングや調査が進んでいる。

 人と自然の博物館を訪れると、見つかった化石とともに、発掘時の状態を再現したレプリカが展示されていた。幅3メートルほどの岩塊には、尻尾の骨がずらりと並び、近くには血道弓という、尾の血管を保護する骨が折り重なる。日本でこれほどまとまった、保存状態の良い恐竜の化石が見つかるなど、30年前なら想像もできなかった。

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