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特集

ニュージーランド
トンガリロ国立公園

JULY 2009


開発と保護の両立のジレンマ

 トンガリロ国立公園内の河川に生息するアオヤマガモや、マオリ語でカカと呼ばれるオウム、翼を持たない奇妙な小鳥ニュージーランドコマヒタキなどの希少な固有種の野鳥を守るには、罠や毒物を駆使して外来種を駆除するしかない。ニュージーランドコマヒタキは、ハイカーが踏み荒らした落ち葉のあいだにいる虫を探して、ハイカーの足元でとび跳ねる。キウイは、イタチなどの外敵を毒物で徹底的に駆除し、ヒナの保護と飼育に努めたおかげで絶滅を免れた。静かな夜、トンガリロの森の中のトレイルを歩くと、耳をくすぐるような、キウイの不思議な鳴き声が聞こえてくる。

 ルアペフ山の三つの斜面は北島でも最も人気の高いスキー場になっていて、店が立ち並び、リフトや道路が完備している。今なら国立公園でこれほどあからさまに商業施設が開発されることはあり得ないが、スキー場は1913年から操業しており、良しあしはともかく、シーズンになると毎年50万人ものスキー客が訪れる。環境保護省は、スキー客の受け入れと、世界有数の自然景観の保護を両立させようと公園管理の在り方を模索している。

 トンガリロ国立公園の保護管理には、これまで以上に複雑な決断が必要になってきた。トンガリロ周辺のイウィ(マオリの集落)に暮らすマオリたちは、支配者のパケハ(ヨーロッパ人を祖先にもつ人々)の政策決定には長らく参画できなかったが、ここ数十年で政治的権利を認められ、影響力を及ぼすようになった。こうした先住民のあいだには、トンガリロを国立公園にしたホロヌクは一部族の長老だったにすぎず、マオリ全員の代表として三つの火山がそびえる土地を譲渡する権利などなく、この土地をマオリの聖地として返還を求めるべきだという意見もある。そこまでの強硬策ではなくても、山頂への立ち入りを禁止するか、地元のマオリのガイドが同伴した場合にしか入山を認めないとする意見もある。

 固有種の保護、開発との両立、信仰と文化に根ざした価値観の違いなど、環境保護省はこうした問題すべての解決を迫られている。それだけではない。トンガリロ国立公園の火山は、いつなんどき大噴火を起こして崩壊してしまうか誰にもわからないのだ。

 それでも、この公園を訪れると、つかのま、こうした不安を忘れられる。公園をハイキングすれば、火山岩に覆われた荒涼とした大地や植物相の豊かな森を訪れたり、滝の音や飛び立つハトの羽ばたきに耳を傾けたり、地中深くから立ち上る硫黄の臭いや雨のあがったあとに漂うコケやシダ、土の匂いをかいだりすることができる。なによりもこの土地を創造し、そして破壊する、ルアペフ山とナウラホイ山、トンガリロ山の威容を目の当たりにできるのだ。

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