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特集

シリーズ 地球のいのち
シロナガスクジラ

JULY 2009


 カランボキディスは生物学者で、米国ワシントン州の非営利組織、カスカディア研究所の共同設立者だ。写真を基に識別したクジラの数は、米国西海岸でトップを誇る。彼が1999年にコスタリカ・ドームで行った調査では、カリフォルニア沖で撮影したクジラと同じ個体を10頭も写真で特定することに成功した。

 なぜシロナガスクジラは夏の終わりに餌場の海域を離れ、数千キロも移動して、コスタリカ・ドームで冬を過ごすのだろうか。発信器をつけたクジラの中には、ほかの個体よりも早めに南下して5カ月以上もドームで過ごし、遅めに北上するものもいる。この行動は、ヒゲクジラ亜目のほかのクジラでは、妊娠中や出産直後の雌に見られるが、シロナガスクジラで確認されたことはない。そもそも出産の目撃例もないのだが、調査チームはドームが繁殖地になっているのではないかとみている。

 ザトウクジラやセミクジラの場合、繁殖地ではほとんど餌を食べないことが知られている。だがシロナガスクジラの場合は、あの巨体と膨大なエネルギー消費を考えれば、冬の間もたっぷり食べられる場所を見つけなければならないだろう。なにしろ、生まれたときすでに体重が約3トンもある赤ちゃんクジラは、1日に90キロずつ体重を増やしていく。その旺盛な食欲を満たすためには、大量のオキアミを消化して母乳をつくらなければならない。コスタリカ・ドームの湧昇がもたらす豊富な生物資源は、その役に立っていると考えられる。

 シロナガスクジラは1960年代の半ばになって、ようやく国際的に保護される運びとなった。だが、なぜか個体数はほとんど回復していない。コスタリカ・ドームのある海域は、世界で最も密度の高い個体群がやってくる繁殖地であるが、船舶の往来が激しいきわめて危険な海域でもある。数を増やすためには、その個体数や回遊ルートを把握して分布図をつくる必要があると、メイトとカランボキディスは考えている。

クジラを追って一路南へ

 私たちはシロナガスクジラの回遊ルートを南下しながら交代でブリッジに立ち、水平線に潮が吹き上がるのを待ち続けた。

 人工衛星からの情報によれば、識別番号5801番と23043番の個体はすでにドームに到着していて、5670番は接近中だ。調査チームは、23043番にとりわけ強い関心を抱いていた。早い時期にドームに来た雌であることから、出産を控えている可能性が考えられる。例の白鯨4172番は、もし今年ドームに向かっているとすれば、南へ移動中の群れのどこかにいるだろう。しかし太平洋は広い。見渡すかぎり、クジラが吹き上げる潮は見えなかった。

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