/2009年7月号

トップ > マガジン > 2009年7月号 > シリーズ 地球のいのち シロナガスクジラ


定期購読

日経ナショナル ジオグラフィック 翻訳講座 秋期受講生募集中 詳しくはこちら

ナショジオクイズ

Q:写真は14世紀のペストの大流行で亡くなった遺骨。このペスト菌を発見した日本人といえば誰でしょう。

  • 野口英世
  • 杉田玄白
  • 北里柴三郎

答えを見る

ナショジオとつながる



特集

シリーズ 地球のいのち
シロナガスクジラ

JULY 2009


 湧き上がった深層水には、酸素が少なく、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩などが含まれている。それらの栄養素が海のオアシスをつくり出し、海洋性の植物プランクトンを豊かにはぐくむ。それが動物プランクトンの餌となり、さらに動物プランクトンを目当てに、もっと大きな生き物がドームに集まってくる。シロナガスクジラもその一つというわけだ。

 地球の歴史上、最も大きな生物であるシロナガスクジラは、セミクジラなどと同じヒゲクジラ亜目に属し、学名でBalaenoptera musculusと呼ばれる。18世紀スウェーデンの生物学者カール・フォン・リンネは、ラテン語で「クジラ」を示すbalaenaと、ギリシャ語で「ひれ」または「翼」を意味するpteronを組み合わせて属名をつけた。種名は、ラテン語で「ネズミ」を意味するmusに、小ささを意味する接辞をつけたもので、あきらかにリンネ流のジョークと言える(和名は漢字で「白長須鯨」と書き、長須は「長身」の意)。

 “小さなネズミのクジラ”ことシロナガスクジラは、最大で体重200トン、体長30メートルにまで成長する。舌はゾウを乗せて運べるほど大きく、動脈は小柄な成人がすっぽりおさまるほど太い。その大口径の動脈に血液を送る心臓は、およそ10秒に1回、重厚な鼓動を打つ。

 シロナガスクジラは泳ぐスピードが非常に速いうえ、陸から遠くて冷たい南極海を主な生息域としていたこともあって、20世紀初頭まで人類の脅威をほとんど受けずに暮らしていた。

 だが、爆薬を仕込んだ銛や船足の速い蒸気船などが発明されると捕鯨の対象となり、1900年から60年までに36万頭が殺された。南大西洋に位置するサウス・ジョージア島付近にいた個体群も、日本の沿岸を餌場としていた個体群も全滅し、シロナガスクジラは絶滅の淵に追い込まれた。

 今回の調査チームを率いるブルース・メイトとジョン・カランボキディスは、北米の西海岸沖で夏を過ごす約2000頭のシロナガスクジラを追っている。皮肉なことに、かつては少数派にすぎなかったこの海域の群れが、現在では最も密度の高い個体群となって残っている。

 メイトは、米国オレゴン州立大学海洋哺乳類研究所の所長で、誰よりも多くの発信器をクジラにつけてきた。メイトが最初にコスタリカ・ドームに注目したのは1995年、夏にカリフォルニア沖で発信器をつけた1頭のシロナガスクジラが、冬になってコスタリカ沖で信号を発していることに気づいたときだった。

Back2next

年間購読のお申込はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー