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砂漠に恐竜を求めて

JULY 2009


予想外の大型化石を発見

 だが、シュトローマーは念願の哺乳類化石を発見できなかったばかりか、大型動物の化石を掘り出したり、運搬するに足る道具立ても持参していなかった。それゆえ彼自身は失意のうちにドイツへ帰還することになってしまう。しかし、助手たちは彼が見つけ出したバハリヤの地層で引き続き発掘を行った。こうしてほどなく掘り出され、シュトローマーの元へと運ばれた化石の中に、じつは恐竜研究史にひときわ輝く大発見が含まれていたのである。

 シュトローマーが特に注目したのは、脊椎の上部の突起(神経棘と呼ばれる)が著しく高く伸びた標本で、とりわけ長いものでは高さ1.8メートルにも達していた。これは知られる限り、動物の神経棘としては最長である。

 シュトローマーは、すぐにこれを彼自身の発見したバハリアサウルスとは姿の異なる、はるかに巨大な獣脚類のものと察した。彼はこの獣脚類を、背中から尾にかけて並ぶその長大な帆にちなんでスピノサウルス(「棘を持つトカゲ」の意)と命名した。

 彼はまた、同じ動物のものとみられる印象的な形の歯にも気がついていた。当時までに知られていた獣脚類の歯は、ほとんどがナイフのように薄く、縁にのこぎりの歯のようなギザギザ(鋸歯)を備えていた。

 しかし、シュトローマーが目の当たりにしたその歯はほぼ円錐形をしており、鋸歯が弱いかわりに、多くの畝が並んでいた。

 このような形状の歯を持つ現生動物はワニのみである。そこで彼は、スピノサウルスが獲物の肉を切り裂いて食べる動物ではなく、ワニ同様、かみついて顎を回転させ、食いちぎる性質を持った捕食者とみなしたのである。

 このようにユニークな特徴をあわせ持っていたスピノサウルスであったが、その運命は人類を見舞った大戦に翻弄されてしまう。

 1944年の4月、英国空軍がミュンヘンを爆撃。未明に投下された数百もの爆弾は劫火となって市の中心部を焼き尽くし、7000棟を超す建築物が数時間で灰燼に帰した。

 当時までに発見されていたスピノサウルスのすべての標本を収蔵していたバイエルン州古生物・地史学博物館もその難を逃れることはできなかった。スピノサウルスの化石は、バハリアサウルスをはじめとする、エジプトで発見された他の貴重な恐竜化石とともに消失、永遠に失われてしまったのである。

 そうして、まだ研究途上だったスピノサウルスの姿も、正体不明のままになってしまう。

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