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特集

フィンランド
オウランカ国立公園

JUNE 2009


 ある意味で、オウランカの森を形作っている主役は樹木ではない。木々を糸のように織り合わせて森という一つの布を作り上げているのは、多種多様な甲虫や植物、地衣類やキノコ類からなる林床の生物相だ。これらの生き物は頭上に広がる林冠に守られているが、その一方で、土壌の養分の分解と循環を手助けしているのだ。

 なかでも重要な森の“織工”はヤマアリだ。私はある日の午後、アーパと呼ばれるこの地方特有の湿原が広がる公園北端部に腰を下ろし、アリの群れの活動を観察した。高さ1メートルほどのアリ塚は、表面をマツの葉に覆われていて、まるで毛の生えたヒグマの肩のこぶのように見える。

 数カ所ある穴から、小さなヤマアリの大群が出たり入ったりしている。塚の表面を休みなく動き続けるアリの群れを見つめていると、時々目の焦点が合わなくなり、塚そのものがぼやけて見えた。

 アリたちの活動は目に見えない場所にも及んでいる。地下と地上、樹木の幹からいちばん高いところにある枝まで、移動路は森全体に延びているのだ。

 アリのコロニーのなかには、オウランカの老木と同じぐらい古いのではないかと思えるものもある。こうしたコロニーは、ほかの昆虫の進入を抑える巨大な有機体だ。仮にあるコロニー全体のバイオマス(生物量)を一個の生物体に当てはめるとしよう。すると、最大級のクマよりも大きな体になるだろう。つまり、ヤマアリはオウランカの自然の秩序を調整するのに欠かせない役割を果たしているのだ。この森で最も重要な生物と言ってもいい。

自然とフィンランド人のつながり

 国立公園は単に生き物や風景を守り、維持するためだけの施設ではない。公園を作った国の文化的な信条を保つ役割も果たしている。フィンランドのほかの公園と同じように、オウランカ国立公園も人々と森との強い文化的な絆を維持するのに役立っている。毎年夏や秋になると、オウランカのような自然豊かな場所で、フィンランドの人々は休暇を過ごすのだ。

 公園内を歩くと、キャンプ場やつり橋、よく手入れされた散策路など、いたるところでキノコを詰めた袋を手にするハイカーに出会う。米国の国立公園なら違法行為だが、フィンランドの人々は、こうした習慣を「万人の権利」として享受してきた。樹木の伐採と地衣類やコケ類の採集は禁止だが、ベリー類やキノコは誰もが好きな場所で採れることになっている。

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