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特集

未知なる地底に挑む

JUNE 2009

文=マーク・ジェンキンス 写真=スティーブン・アルバレス

ネシー州、アラバマ州、ジョージア州は、1万4000カ所の洞窟が密集する地底探検のメッカ。探検家を魅了する洞窟の数々に潜入。

未知なる地底に挑む <前編>
米国南部の洞窟群で、筋金入りの洞窟探検家たちが未知なる地底に挑んだ。

動画翻訳

ナショナル ジオグラフィックの写真家スティーブン・アルバレスは
世界中のすばらしい洞窟をたくさん撮影してきました
今回の特集では スティーブンは故郷で撮影を行いました
私は 自分が生まれ育ったテネシー州カンバーランド高地に暮らしてきました
この地域は洞窟だらけなので子供の頃や青年時代には
友人たちと森を歩き回り洞窟を見つけては中に入っていました
誰も足を踏み入れたことのない洞窟の探検は驚きと冒険に満ちていたからです
どういうわけか 私はいまだに洞窟探検を続けています

一見 やみくもに洞窟を探しているようですが実は 方法があるのです
洞窟探検家たちはこの方法を尾根歩きと呼んでいます
カンバーランド高地は砂岩で覆われていて
水は砂岩にしみこみその下にある石灰岩の層に達します
私たち洞窟探検家はこのような硬い岩の層にそって歩きます
探しているのは 水が硬い岩を通り抜け軟らかい石灰岩層に達している場所です
こうした場所で大きな洞窟が見つかります

もちろん 尾根歩きは一人よりも二人で行った方が効果的です
相棒がマリオン・スミスならなおさらです
マリオンはこれまでに6000カ所以上の洞窟を探検してきました
この穴はだめそうだな

さあ 次の穴を調べてみようか

新しい洞窟を見つけるにはねばり強さと
何物をも恐れず未知なる世界の探検に挑む力が必要です

小さな洞窟を見つけたぞこの地域にはたくさんあるな
気のきいた方法とは言えないが試しにやってみよう

生きてここに入れて本当にうれしいよ

思っていたよりも少し大きいな
さて どうしようか?このあたりは もっと広くなっているようだ
マリオンは 米国で最も多くの洞窟を探検している男です
どうにか体を押しこんで右の角を曲がると小さな通路を見つけた
探検するのにロープが必要な場所もあった非常にうれしいね
今度 ここに戻ってきて地下に何があるか調べてみよう
テネシー州の洞窟がまた一つ増えることになるぞ

しかし 大きな発見には一生に一度しかめぐり合えません
テネシー州のランブリング・フォールズ洞窟で10年前に測量を行ったとき
マリオンと調査隊のメンバーは思いがけない光景にめぐり合いました
調査隊の誰もがとりわけ 私自身が驚いたんだが
私たちは縦穴に出たんだ大きな縦穴にね
正直なところ全員が圧倒されたよ

“とてつもない”と名づけられたこの縦穴は深さが60メートル以上あり
米国の洞窟で2番目に大きいランブル・ルームへ通じています

スティーブンは マリオンが発見した縦穴を撮影することにしました
しかし 競技場ほどの広さがある空間をいったいどうやって明るくするのでしょうか?
なにしろ 電気は使えないのです

未知なる地底に挑む <後編>
米国南部の洞窟群で、筋金入りの洞窟探検家たちが未知なる地底に挑んだ。

動画翻訳

洞窟探検家たちはこの地方のことを
テネシー・アラバマ・ジョージアの頭文字をとって“タグ(TAG)”と呼んでいます
数百万年にわたって基岩が水で浸食され
この地域には1万3000を超える洞窟ができました
洞窟探検家たちにとっては楽園です

きみとブライアンは道具が必要だな
ナショナル ジオグラフィックの写真家であり洞窟探検家でもあるスティーブン・アルバレスが
ランブル・ルームの暗闇の中に立ち
競技場ほどの広さがある空間を照らし出す用意をしています

電気が使えない場所においては決して容易なことではありません
スティーブンは アシスタント一人ひとりに強力なフラッシュガン(カメラの閃光装置)を持たせ
ランブル・ルーム全体に慎重に 彼らを配置しました
みんなをどこに配置すればいいか頭の中では分かっているんだ
君はちょうどあの位置に立つ
そこに一人 向こうに一人
君はカメラから一番近い人物だ
誰かがロープでぶら下がって君をライトで照らす
君の姿がシルエットになることが非常に重要なんだ

スティーブンはこの広い空間を見せるために
4枚の写真を撮り つなぎ合わせて1枚の大きな写真にすることにしました
ここを撮って この部分を撮ってそれからこの部分を撮って……
全員が位置につくとスティーブンは大声で号令をかけます

撃て!
電球がうまくつかない
装填!
装填!
ブライアンルークに新しいフラッシュガンを持たせてそちらへよこす

よし なかなかいい構図だ
明かりを全部消す必要があるな

撃て!

装填!

撃て!
また電球がつかない

装填

撃て!
装填

撃て!

よし! すばらしい装填! いいぞ

これはすごいものになるなんてこった 最高の写真になるぞ

スティーブンは 暗闇のなかから
“とてつもない”縦穴の圧倒的な美を明るみに出してみせたのです

 うめき声を上げながら爪で引っかき、首をひねっては、青白い頭部を岩にこすりつける。“括約筋”とは、くねくねと延びる洞窟に出現した穴のことだ。大きさはバスケットボールほどしかない。その穴を、“ヤギ”の愛称で呼ばれるマリオン・スミスが通り抜けようとしているのだ。その姿はヨガでもしているかのようで、両腕は頭上に掲げられ、両脚を正座のように折りたたみ、腰を無理やりねじっている。

 スミスは、6人編成の洞窟探検チームのしんがりを務めていた。洞窟探検の達人らしい機敏さで、絶えず悪態をつきながら、最後には“括約筋”をくぐり抜けた。

 女性隊員のクリステン・ボボが、ヘッドランプの光が私の顔に当たらないように気を使いながら、ゆっくりと振り返って、こう言った。「マリオンはノッてくると、こうやって悪態をつくのよ」。38歳のボボ自身、洞窟探検のベテランでもある。

 スミスは穴を抜けて地面に下り立つと、「一度味わった苦しみは、必ずもう一度味わうことになるのさ」と、自嘲気味に言った。米国南部テネシー州の地表から数百メートル下の地底にいるため、地上に戻るには、再びここを通り抜けなければならないのだ。

 歴史学者のスミスは62歳。やせて背が高く、生まれてからずっと地下で生きてきたのではないかと思えるほど色が白い。この推測もあながち的外れと言えないだろう。1966年に洞窟探検を始めて以来、彼はほぼ毎週のように地下に潜ってきたからだ。これまでに探索した未踏の洞窟は全長80キロを超え、その大半は這ってしか進めないような狭いものばかり。彼こそ、全米で最も多くの洞窟を探検した人物だ。

 “括約筋”との格闘を終え、私たちは休憩を取ることにした。電池の消費を抑えるため、休むときはヘッドランプを消す。すると、私たちはたちまち暗闇に包まれた。顔のすぐ前に手をかざしてみたが、いつまでたっても見えてくる気配がない。それは、太古から一度として太陽の光に邪魔されたことのない暗闇なのだ。

 私たちが探検していたのは、テネシー州北部から中部に広がる、農場と森に覆われた丘陵地の地下にあるジャガー洞窟の一部だ。そこは、厚い石灰岩層に延びる洞窟の支洞で、最近発見されたばかりだった。テネシー州とアラバマ州、ジョージア州の州境が接するこの一帯には、数多くの洞窟が密集していて、さながら、穴がいくつも開いたエメンタールチーズのようだ。洞窟探検の愛好家たちは、テネシーの“T”、アラバマの“A”、ジョージアの“G”を取って、この一帯を“TAG”と呼んでいる。

 3州がある場所は、太古の海が覆っていた数億年前に堆積した石灰岩地帯の南端に当たる。石灰岩の地層は弱酸性の水による浸食を受けやすい性質のため、あちこちに洞窟が生まれることとなる。水の浸食作用によって、数百万年もの時間をかけて、石灰岩はゆっくりと浸食され、無数のトンネルや穴からなる地下世界ができ上がる。その中には、まだ人が足を踏み入れていない場所が無数にあるという。確認されているだけでも、タグ地方には1万4000カ所を超す洞窟が存在し、そのすべてを探索しようと意欲を燃やす探検家もいる。

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