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食料危機は
克服できるか

JUNE 2009

文=ジョエル・K・ボーン Jr. 写真=ジョン・スタンマイヤー

える食料需要に、生産が追いつかない。昨年の穀物価格の高騰は世界各地で暴動を引き起こした。新たな「緑の革命」は起こせるか。

 2008年に世界を襲った食料価格の高騰は、食料危機の到来を告げる警鐘だった。2005年から昨年夏にかけて、小麦とトウモロコシの国際価格は3倍、コメは5倍に上昇。それに伴って、エジプトやバングラデシュ、中米のハイチなど世界20カ国以上で暴動が起き、7500万人が新たに貧困層に加わった。農作物の不作による短期的な値上がりは過去にも繰り返されてきたが、今回は世界の穀物生産量が史上最高に達した年に価格が跳ね上がった点が、事の重大さを物語っている。

 私たちは毎日ごく当たり前のように食卓に向かい、自然の恵みを食べている。現代社会では、多くの人々が農耕の手間から解放され、お金さえ払えば、調理の手間すらかけずに三度の食事にありつけるようになった。食材がどこから運ばれてきたのか、どうやって育てられたのか、あまり考えることもない。価格が上がってはじめて、私たちは食べ物のありがたさに気づく。こうした無関心のツケはあまりに大きい。

 価格高騰の背景には、慢性的な食料需給の不均衡という難題がひそんでいる。実はこの10年間、世界の食料消費量は、ほとんどの年で生産量を上回ってきた。私たちは、穀物備蓄を取り崩して食いつないできたわけだ。

 「農業生産性の成長率はせいぜい年間1・2%程度です。これでは人口の増加と、それに伴う需要増に追いつけません」と、米国ワシントンに本拠を置く国際食料政策研究所(IFPRI)のジョアキム・ボン・ブラウン所長は指摘する。

 今回の価格高騰は、人々に行き渡るだけの食料がないことを知らせる危険信号だ。世界中で10億人にのぼる最貧層は、収入の50・70%を食費に充てているため、価格の上昇で特に大きな打撃を受ける。食料価格は、世界的な経済危機の影響で上昇が一段落したものの、今もまだかなり高い水準にとどまっていることは確かだ。さらに、気温の上昇や水不足の深刻化といった気候変動の影響で、世界の多くの地域で収穫量の減少が予測され、慢性的な食料不足に陥るおそれがあると、一部の専門家は警告している。

 温暖化と人口の増加が進む世界で、どうすれば飢えを減らせるのか。この問題に取り組むのが、国連と世界銀行が中心となって設立された国際農業研究協議グループ(CGAIR)だ。その傘下の研究機関は、1950年代半ばから90年代半ばにかけて、世界のトウモロコシ、コメ、小麦の平均収穫量を2倍以上増やすという偉業を成し遂げた。この驚異的な穀物生産の伸びは、「緑の革命」と呼ばれている。

 21世紀半ばには世界の人口が90億に達すると予測される中で、CGAIRの専門家チームは、2030年までに食料生産を2倍にする必要があると考えている。緑の革命を成功させるまでにかかった年月の半分で、第二の緑の革命を成し遂げなければならないわけだ。

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