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特集

北極海の資源争奪戦

MAY 2009


 北極海全域のデジタル地図が発表されたのは、2000年のことだ。そして、北極点の周辺は、まだ空白部分が多い。研究者たちは海底の正確な地形を把握するために、様々な地点で海の深さを測定しなければならない。最近まで、水深測量術に基づく高解像度のデータといえば、冷戦時代の潜水艦の航跡記録しかなかった。そしてその多くが、恐ろしいほど精密さに欠けるデータだった。

 メイヤーは地図の空白部分を埋めることに執念を燃やしている。彼をかきたてているのは、北極海の資源開発を狙う米国への愛国心ではなく、科学的な発見に対する純粋な情熱のようだった。

ハイテク砕氷船での日々

 ヒーリー号に乗船した私は、バロー出身のジミー・ジョーンズ・オレマウンと同じ船室を割り当てられた。26歳の彼はイヌピアックと呼ばれるアラスカの先住民で、調査で野生の哺乳類に害が及ばないように監視するのが仕事だ。船のブリッジから双眼鏡で海を観察したり、休憩室でインターネットをしたりして過ごすことが多い。

 ほとんどの研究者は8時間交代で船内の研究室で作業するのだが、メイヤーは午後9時から午前9時までずっと詰めていた。そのうえ、昼間もずっと研究室にいるようだった。メイヤーは高校ではスキューバダイビングの免許を取り、大学院修了後にNASA(米航空宇宙局)の宇宙飛行士の最終候補に残った経歴の持ち主。過去30年間のうち5年間を海の上で過ごしてきた。夜が更けるとケルト音楽を流し、足でリズムを取りながら、自ら開発に加わった3D地図をうれしそうに眺める。時には個室に戻らず、研究室の床で寝てしまうこともあった。

 船内で地図の作成作業の拠点となっているのは、11台のモニターがずらりと並んだ壁だ。ノートパソコン2台とパソコン用モニター8台、そして閉回路テレビ(CCTV)1台が、風速から海水の塩分濃度、堆積層の厚さまで、あらゆる情報を映し出している。通常ここには、若手研究者が陣取っている。

 なかでも重要なのは、緑の線が不規則に広がったり収縮したり、変形したりしているモニターだ。これは砕氷船の船体に埋め込まれたマルチビーム・ソナー(音響測深機)から発射された「ピン」と呼ばれる音波の記録で、ピンが海底にぶつかって船に戻ってくるまでの時間で、海底の形状を把握できる。このソナーは角度幅110℃の海底を測定可能で、1時間あたり約6万のピンを発射する。

 私たちの乗ったヒーリー号は、チュコート海台の縁部を調査していた。大陸棚と深海底の境界にあたり、国連海洋法条約において重要な意味を持つ「大陸斜面脚部」と呼ばれる部分だ。メイヤーは2003年、マルチビーム・ソナーを利用して高さ3050メートルの未知の海山を発見し、「ヒーリー海山」と命名した。

 彼はもっぱら水深測量に力を入れているが、ほかの関係国がまず収集するのは震動データだ。圧縮空気を水中に放出するエアガンや爆薬を使って、海底を貫通する衝撃波を発生させ、地殻構造を調べる。カナダとデンマークは、ロモノーソフ海嶺が自国の沿岸から続く大陸棚であることを証明して資源開発権を主張するため、これまでに数億円もの資金を注ぎ込んできた。ロモノーソフ海嶺は北極海を横断する海底山脈で、ロシアは2001年、自国の大陸棚の延長として国連に申請した。

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