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特集

広がるグリーンな屋上

MAY 2009


 この図書館とは別の地区にあるバンクーバー・コンベンション・センターも屋上緑化の例だ。その向かいに建つフェアモント・ウオーターフロント・ホテルの屋上には、シェフ専用の菜園がある。バンクーバーに限らず、米国シカゴやドイツのシュツットガルト、シンガポール、東京にある「緑の屋根」に立ってみれば、都市の屋上景観がどれほど変わり得るかが実感できるだろう。そして疑問に思うはずだ。なぜすべてのビルをこんなふうに建てなかったのかと。

 技術的な制約はその答えの一部でしかない。屋上で貯水や排水を行ったり、防水性の被膜を使うことで、屋上緑化は以前よりもずっと容易になった。米オレゴン州ポートランドなどの都市では、公共料金の減免措置を講じて屋上緑化を奨励している。ドイツ、スイス、オーストリアといった欧州諸国では、屋上が平坦な建物は緑化することが義務づけられているほどだ。

 屋上緑化に注目が集まり始めたもう一つの要因は、都市というものに対する意識の変化だ。都市と自然は対極のものという考え方は、もはや賢明でも実用的でもないし、道徳的にも正しくない。都市が自然を浸食しつつある昨今、都市に自然を取り戻せば、都市はより住みやすい場所に変わるだろう。その恩恵を受けるのは人間だけではない。

 「緑の屋根」は、自然の生態系がどれだけ優れているかの証明でもある。防水塗装しただけの屋上では、夏の日中に65℃を超えることもあり、都市の気温が周辺部より高くなるヒートアイランド現象の一因ともなっている。それに対して土と植物が断熱材の働きをする「緑の屋根」は温度変化が緩やかで、建物内の冷暖房費も20%ほど削減できる。

 ビルの屋上に降った雨は、建物の壁面という「人工のがけ」を流れ落ち、歩道という「人工の峡谷」を通って下水道へと流れ込む。地中に浸透することも濾過されることもなく、流速が落ちることもほとんどない。

 一方、「緑の屋根」は郊外の牧草地と同じように雨水を吸収して濾過するため、流速が和らぐばかりか、雨水の一部をためておいて別の用途に使うこともできる。ひいては下水があふれかえる都市災害が減って排水設備の寿命が延び、周囲の川や海によりきれいな水を返すことにつながるのだ。

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