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特集

マンモス解剖

MAY 2009


消えた遺体

 2007年5月のある朝のこと。遊牧民のユーリ・フディは、シベリア北西部のヤマル半島を流れるユリベイ川のほとりにいた。目の前に横たわる小さな遺体をどうしたものか、3人の息子と話し合っていた。

 見たことのない動物だった。だが、その正体は見当がついた。シャーマンの歌う神話で伝え聞いた動物「マーモン(ロシア語のマンモス)」の赤ん坊にちがいない。

 フディたちは、トナカイの群れを率いて暮らす少数民族ネネツの一員。彼らの伝承によると、マンモスは凍った暗い地下世界からさまよい出てくるという。

 マンモスの牙なら、フディはこれまで何度も目にしていた。この辺りでは、夏になると凍土が解ける。そして毎年のように、大きくカーブした、黄色がかった牙が見つかる。

 だが、フディがマンモスの体と対面するのはこれが初めてだった。しかも、この遺体は生前の姿を、薄気味悪いほどよくとどめている。ないのは体毛と爪くらいで、あとはまったく無傷と言っていい。

 大変なものを見つけてしまった。誰かに知らせねば。だがフディは、遺体に触れる気にはなれなかった。ネネツの言い伝えで、マンモスは不吉なものとされているからだ。

 フディはひとまず240キロ南の小さな町ヤルサレへ向かった。昔なじみのキリル・セロテトに相談するためだ。セロテトはフディよりも外の世界の事情に詳しい。フディからマンモスの話を聞くと、彼は地元の博物館の館長に会いに行けばいいと勧めてくれた。館長は地元当局にかけあい、フディとセロテトとともにヘリコプターでユリベイ川に行く手はずを整えた。

 ところが、川べりの砂州に着いてみると、マンモスは跡形もなく消えていた。

大型哺乳類の時代

 マンモスは、長鼻目ゾウ科マムートス属に分類される絶滅したゾウの仲間だ。その祖先は今からおよそ350万年前にアフリカからユーラシア大陸に広がり、森林や草原に適応した。

 なかでも特によく知られているのは、現生のゾウと近縁で、体の大きさもほぼ同じケナガマンモス(学名Mammuthus primigenius)だ。今から40万年前の更新世中期に、シベリア北東部に初めて出現したと考えられている。

 このマンモスは寒冷な気候によく適応していた。その名の通り、1メートル近くにもなる長い体毛に覆われ、内側に毛がはえた小さな耳をもつ。カーブした巨大な牙は、雄同士の闘いに使ったとみられるが、雪の下に埋もれた食料を掘り出すのにも役立ったかもしれない。

 地下深くまで凍ったシベリアの永久凍土地帯では、何万年も前に土砂に埋もれて死んだマンモスが、凍った状態で保存されているケースが珍しくない。シベリアの大地には、おびただしい数のケナガマンモスが眠っている。マンモスが地下世界に暮らすというネネツの伝承も、まんざら作り話とは言えない。

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