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特集

氷の楽園
スバールバル諸島

APRIL 2009


暖流が支える極北の生命

 北の最果てに位置する島々の生態系を支えるのが、メキシコ湾流だ。黒潮と並んで世界最大の海流であるこの暖流は、米国東海岸を離れると、北大西洋海流と名前を変え、北東へと流れていき、スバールバル諸島沖で西スピッツベルゲン海流とぶつかって途切れる。

 この海流は温かく塩分が濃いため、合流点の海域は氷に覆われることがあまりなく、毎年春になると膨大な量のプランクトンが発生する。このプランクトンを求めて、数多くのクジラやカラフトシシャモ、ホッキョクダラが集まり、さらにこうした魚を餌にしようと海鳥やアザラシがやって来る。そして、このアザラシの大群は、スバールバル諸島のホッキョクグマの餌になる。成熟したホッキョクグマは、ワモンアザラシやアゴヒゲアザラシなどの脂肪を大量に食べるのだ。

 スバールバル周辺の豊かな海には、毎年、無数の野鳥が渡ってくる。5~6月にかけて、海氷が消え、ツンドラ地帯を覆っていた雪が解けると、300万羽近い野鳥がこの島々に集まる。鳥たちは数こそ多いが、種は限られている。大挙して飛来するのは28種ほどとみられ、ライチョウだけが渡りをせずに、年間を通して島に留まる。野鳥たちにとって、スバールバルは安全な繁殖地と豊かな餌場といえる。

 島の独特の地形も、鳥たちを引き付ける重要な要因だ。島の海岸線は、ほとんどが切り立った崖になっている。しかも、その表面には、鳥が巣を作るのに十分な広さの岩棚が無数に突き出ていて、その多くが、ホッキョクギツネなどの捕食動物が近づくには危険すぎるのだ。

 繁殖期になると、フルマカモメ、ハシブトウミガラス、ミツユビカモメなどが同じ崖にいくつも突き出た岩棚に巣を作り、太陽が沈まない夏の間、1日中休むことなく、眼下の海で魚を捕まえてはヒナに与えて子育てをする。

 こうした渡り鳥は9月になれば南に向かって飛び立っていく。しかし、1年を通じてスバールバル諸島に留まる生き物も少なからずいて、驚嘆を禁じ得ない。彼らはみな、北極圏の過酷な冬を生き延びるための方法を心得ているようだ。つまり、冬の間も狩りを続けるか、餌を十分に蓄えておくか、という2通りの方法だ。

 冬になっても狩りを続ける動物の代表は、言うまでもなくホッキョクグマだ。クマたちは、呼吸をしに氷上の穴に頭を出すアザラシを狙って、穴のそばで待ち伏せしている。ホッキョクギツネは2つの方法を併用する。冬になるとカムフラージュのために、体毛を白くして狩りを続けるが、獲物が乏しくなると、数カ月前から蓄えておいた餌を掘り出す。スバールバル諸島のような過酷な土地では、餌を蓄えているかどうかで、生死が決まることも多いのだ。

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