/2009年4月号

トップ > マガジン > 2009年4月号 > 特集:地球のいのち 両生類の危機


定期購読

ナショジオクイズ

クラゲにあるものは次のうちどれ?

答えを見る

ナショジオとつながる

週2回
配信

メールマガジン無料登録

メルマガ登録の詳細はこちら



特集


シリーズ
地球のいのち
両生類の危機

APRIL 2009

文=ジェニファー・S・ホーランド 写真=ジョエル・サートレイ

息域の縮小や環境汚染、気候変動の影響に加えて、カビの一種が両生類の存続を脅かしている。研究と保護の現状をレポートする。

 雄は、雌の体を抱え込み、きつく前脚をからませた。組み伏せられた雌は、手足を大きく広げ、卵の詰まった腹を浅い小川の水に浸けている。

 この2匹はフキヤヒキガエル属の新種。南米アンデス山麓の狭い谷と、そこに隣接するアマゾン流域の低地でしか見つかっていない貴重な種で、まだ学名もない。黄色に黒をあしらった雌の体は、塗りたてのペンキみたいに鮮やかだ。ただし、この雌はすでに息絶えている。

 ここはエクアドル南東部の町リモンの近郊。カエルたちがいる川のすぐ上では、道路工事が行われていて、斜面を滑り落ちてきた土砂が森に続く流れの一部をふさいでいる。

 爬虫(はちゅう)両生類学者のルイス・コロマは、足下のゆるい岩場を用心深く進みながら、川の被害を調べた。コロマは47歳。眼鏡をかけた小柄な体格で、小さなカエルの刺繍(ししゅう)が入った黄色いシャツを身につけている。彼は、川をふさぐ土砂に棒を突き刺しながら言った。「こいつがカエルのすみかを壊してしまったのです」

 カエル、サンショウウオ、イモリ―両生類は昔から神話や伝説でおなじみの動物だ。カエルは、中世ヨーロッパで魔物の一つとされていたし、古代エジプト人にとっては生命と豊穣の象徴だった。そして現代の科学者に言わせれば、両生類は3億年の歳月を生き抜いて6000以上の種に進化した動物の一大グループ、ということになる。地上のどんな生き物にも負けないほど美しく、多様性に富み、同時に最も深刻な危機にさらされている動物でもある。

 両生類は現在、半数の種が危険な状態にある。1980年代以降に100種以上が絶滅したといわれ、現在も数百種が絶滅寸前とされる。ただし、希望がないわけではない。絶滅の嵐が過ぎ去るまで、一部の種を隔離・保護しようという取り組みが始まっているし、世界で猛威を振るう両生類の病気「カエルツボカビ症」の治療にも、少なくとも実験レベルでは成功した。

 コロマは同僚のサンティアゴ・ロンとともに、エクアドルの首都キトにあるポンティフィシア大学の動物学博物館に両生類の飼育施設をつくった。国家の損失を防ぐという大きな目標から考えれば、ほんのささやかな取り組みにすぎないことは、二人とも承知している。エクアドルに生息する両生類は、すでに学名がついているものだけで470種を上回るのに、この施設で飼育しているのは16種にすぎないのだ。

1Next

年間購読のお申込はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー