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地球のいのち
両生類の危機

APRIL 2009


 そのうえ、エクアドルでは国中で大規模な森林伐採が進んでいるにもかかわらず、毎年新種の両生類が発見されている。コロマの研究室でも、最近発見された約60種が、学名が決まるのを待っているところだ。

 コロマとロンは、次の手を打ってはいる。生息地を守るために土地買収を始めているし、飼育施設も拡大して100種類以上を収容したいと考えている。しかし、野生の個体数の減り方は尋常ではない。「私たちは、絶滅した種について語る“古生物学者”になりつつあるのです」と、ロンは嘆く。

 二人の研究室には、その証拠が山ほどある。コロマはガラス瓶が一杯に詰まった棚から、一つを取り出した。中にはアルコール漬けの標本が2体入っている。「この種は私の目の前で絶滅したのです」。コロマは無念そうに言った。

大量絶滅の時代

 これでは、現代を「大量絶滅の時代」と考える人々がいるのも無理はない。6500万年前の白亜紀末以来、これほどの規模で生物多様性が失われている時代は他にない。それでも、両生類は過去の絶滅の危機を何度も切り抜けてきた。恐竜が死に絶えた時も生きのびたというのに、なぜ今回の危機は特に深刻なのか。

 「全身に無数の小さな傷を負って死ぬのと同じです」と、米国カリフォルニア大学バークレー校の生物学者デービッド・ウェイクは両生類の現状を説明する。生息地の破壊、外来種の侵入、水質汚染、商業目的の捕獲といったいくつもの問題が束になって、世界中の両生類を脅かしているというのだ。気候変動の影響についてはまだ議論が続いているが、アンデス山系の一部では過去25年間で急激な気温上昇と、干ばつなど極端な乾燥が観測されている。

 だが、多くの場合、絶滅の「とどめの一撃」となっているのはカエルツボカビ症だ。リモンの小川で出合ったフキヤヒキガエルのペアも例外ではない。2匹の体を調べたところ、どちらもカエルツボカビ菌に感染しており、雄も雌の後を追うようにして死んだ。

 コスタリカの両生類にカエルツボカビ症の大きな被害が出はじめたのは1980年代だが、当時は誰も原因がわからなかった。90年代半ばにオーストラリアと中米でカエルの大量死が問題になって初めて、研究者はようやくツボカビ菌が犯人だと気づいた。

 この菌はカエルの皮膚や口器に含まれる構造タンパク質ケラチンに感染し、カエルの皮膚呼吸や体内の水分と塩分の調節を妨げるのではないかと考えられている。

 カエルツボカビ菌は現在、日本をはじめカエルが生息するすべての大陸にまたがる、43カ国で確認されている。この菌は標高ゼロメートルから6000メートルまで生き続けることができ、カエルの脚や鳥の羽、人の靴などを介して伝播する可能性がある。

 被害を受けた両生類は200種を上回り、たとえばオレンジヒキガエル、ゼテクフキヤヒキガエル、ワイオミングヒキガエル、カモノハシガエルは、すでに野生では絶滅した。

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