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暴走する雨の脅威

APRIL 2009


 地球温暖化が降水パターンに及ぼす影響を、定量化するのは難しい。自然の要因による年ごとの変動がもともと大きいからだ。専門家によると、1年ごとの細かい変動の蓄積から、降水量の長期的な変化が見えてくるのは、今世紀半ば以降になるかもしれないという。

 だが、すでにわかっていることもある。1925~99年の間に、北緯40度から70度までの地域では降水量が増え、逆に、北緯0度から30度の地域では乾燥が進んだ。こうした広域における傾向と同様に、ヨーロッパの北部では雨が増え、南部はますます乾燥していく。

命の水をめぐる闘い

 スペイン環境省は、気候変動と不適切な土地利用とが相まって、国土の3分の1が砂漠化の危機にさらされているとの見解を明らかにした。また、乾燥傾向が強まるキプロス島では、昨年の夏、貯水量が7%にまで落ち込み、ギリシャからの水輸入を余儀なくされた。キプロスの環境委員会に属するハラランボス・テオペンプトウは、心配が絶えないと話す。「IPCCは、キプロスの降水量が20~30%減少すると予測しています。つまり、水不足は一過性の問題ではないということです。これに気温の上昇が加われば、地中海沿岸に住む人々の生活は、非常に厳しいものになるでしょう」

 降水量の増減だけでなく、降水パターンの変化も深刻な影響を及ぼすだろう。程度の差こそあれ、世界では全人口のおよそ6分の1に当たる10億人以上の人々が、氷河の融解水や、周期的に得られる雪解け水に頼って生活していると推定される。温暖化が進めば、雨が増えるかわりに雪の量が減るので、こうした自然の貯水システムは崩壊するおそれがある。

 たとえば、ペルー南部の都市クスコでは夏の間、給水の一部をケルカヤ氷冠の融解水に依存している。だが、温暖化の影響を受けて、ここ数年で氷河が後退し、たびたび水の配給支援を受けざるを得ない状況に陥った。

 さらに最近の各種報告書などではしばしば、数十年内に気候変動が政治不安の重大な要因となると予想されている。それどころか、地球温暖化はすでに、世界の難民を増加させ、武力衝突を助長している可能性もある。

 「気候変動は現在、人々に移動を強いる主な原因の一つとなっています」。こう語るのは、国連難民高等弁務官のアントニオ・グテーレスだ。アフリカのスーダン西部で発生したダルフール紛争では、推定30万人が犠牲になった。一部の専門家は、周辺地域の降雨量の変化と紛争の関連性を指摘している。雨をめぐって遊牧民と農民の対立が生じたというのだ。

 私たちを待ち受ける降雨の変動は、過去に起きた変動のように、社会に深刻な影響をもたらすのだろうか。気候史の専門家リチャード・シーガーは、「予測がつきません」と言う。「人類はこれまでに、同様の状況を経験していないのですから。それでも、人為的な原因による気候変動がこのまま進めば、その答えに直面する日は近いのかもしれません」

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