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暴走する雨の脅威

APRIL 2009


 しかし、水蒸気が増えたからといって、必ずしも雨が多くなるとは限らない。実のところ、世界の総降水量はわずかに増える程度だと、ほとんどの科学者は考えている。

 変化はむしろ、雨がいつどこに降るか、すなわち降水パターンに異変をもたらしそうだ。水蒸気の増加によって降雨にかかわるエネルギーが増幅されることで、湿った空気が上昇傾向を強める地域もあれば、別の地域では雨や雪となって降りやすくなる。

 気象学者のアイザック・ヘルドは、「基本的な傾向として、今後、大気中の水分の移動が大きくなるといわれています」と説明する。

 一般的な気候モデルが示す今後100年ほどの見通しはおおむね、次のような点で一致している。極地方やその周辺で降水量が増加する一方で、亜熱帯地方(熱帯と温帯にはさまれた地域)では減少するというのだ。

 地域ごとのより詳細な予測では、気候モデルによる食い違いも生じてくる。それでも、地中海沿岸地域やメキシコ、米国南西部、南アフリカ共和国、オーストラリア南部などでは乾燥が進み、反対に、カナダやヨーロッパ北部では降水量が増えるというのは共通の見解だ。

 「雨の多い地域ではより多く雨が降り、乾燥した地域はますます乾燥するでしょう」と、ヘルドは語る。

 気温が上昇すると水分の蒸発量も増えるので、総降水量の変わらない地域でも、干ばつが起きやすくなる。そうなると、すでにぎりぎりの降水量で生活している地域や、雨水を頼りに農業を行っているような地域に、とりわけ大きな被害が及ぶのだ。

 水資源問題の研究者で「世界水資源方針計画」の理事を務めるサンドラ・ポステルはこう語る。「アフリカでは、灌漑設備の整った耕地はたった6%しかありません。それだけ、深刻な打撃を受けやすい地域なのです」

 一方で、雨が降るときには猛烈な豪雨になる傾向が強まり、乾燥が進む地域でも洪水が起きる危険性が高まるとみられている。

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が最近発表した報告によると、「激しい集中豪雨が今後、より頻発すると予測される」というが、変化はすでに現れているのかもしれない。1950~80年の30年間に比べ、1996~2005年の10年間だけで、内陸部で発生した洪水の件数が2倍にふくれ上がっているのだ。

 米マイアミ大学で海洋大気科学を研究するブライアン・ソーデン教授は「異常気象の発生する場所だけでなく、その期間や激しさも変化しています。つまり、乾期の乾燥は強まり、雨期の雨量は増えているのです」と指摘する。

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