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特集


シリーズ
地球のいのち
ジャガーの大回廊

MARCH 2009


 こうした悲劇は、メキシコからアルゼンチンにかけて広がるジャガーの生息地(以前は米国も含まれていた)で何千回も繰り返されてきた。ここ数十年で、発生件数はさらに増えている。牧畜や農業、土地開発によってジャガーのすむ主要な生息地の半分が失われ、残された森の各地でも、獲物となる動物が、人間のせいで激減しているためだ。

 だがアラン・ラビノウィッツは、ジャガーの悲劇をハッピーエンドに変えられないかと夢見ている。彼が思い描く光景は、生まれ故郷を離れた若い雄ジャガーが、身を隠すためのやぶや木々がほぼ途切れることなく続く“緑の回廊”を、人間の目に触れずに通りぬけていく姿だ。雄は数日のうちに、1~2日の滞在には十分な数の獲物がいる小さな森を見つけ、休息をとってから旅を再開する。そして最後には、国立公園か野生生物保護区にたどり着く。そこでねぐらと自由に動きまわれる縄張りを手に入れ、たくさんの獲物に恵まれて、繁殖の相手を探す雌と出会う……。

 ラビノウィッツは世界的なジャガーの専門家だ。回廊と保護区が相互につながる広大なネットワークを作るという、夢の実現に向けて動き出している。米国とメキシコの国境地帯から南米まで延びるこのルートは、「ジャガーの道」と呼ばれる。彼はこうしたネットワークこそ、ジャガーを絶滅から救う最善の方法だと考えているのだ。野生生物保護協会(WCS)とともに保護プロジェクト「ジャガーの道」を立ち上げたラビノウィッツは、現在、世界に36種類いる野生のネコ科動物の保護を目的とするパンテラ財団の責任者を務めている。

 パンテラ財団の現在の活動は、ラビノウィッツの保護に対する哲学を反映している。しかし、ほんの10年前には、彼も今とは大幅に違った考えを持っていた。1990年代、ラビノウィッツをはじめとする専門家たちは、数十カ所の地域を選定し、「ジャガー保護ユニット(JCU)」と名づけた。これは、50頭以上のジャガーがいるとみられる広い生息地で、個体数が横ばい、または増加している地域を指す。

 ほとんどの保護ユニットは、中心部に既存の自然公園や保護区を含んでいる。ラビノウィッツはその周囲に、保護区外からの影響を緩和するための緩衝地帯を確保し、保護エリアを広げたいと考えていたと言う。「私たちにできるのは、断片化したそれぞれの地域にジャガーを閉じこめることぐらいだと思っていたのです」

 ところが数年後、驚くべき事実が判明した。DNA指紋法(DNAの塩基配列を分析して家族・親族の関係や種の関係を識別する手法)による調査で、ジャガーは広範囲に生息する大型肉食獣のなかで、亜種を持たない世界で唯一の種だとわかったのだ。遠く離れたメキシコ北部とブラジル南部のジャガーの遺伝子に、亜種とみなすほどの差がないということは、何千年ものあいだ、生息域全体で遺伝子の交配がおこなわれてきたことを意味する。これが事実なら、一部のジャガーは広範囲を移動し、異なる地域にすむ個体群の間を繰り返し行き来していたはずだ。

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