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特集

カナダのオイルサンド

MARCH 2009


1バレルとるのに土砂4トン掘削

 いま地球上で、アサバスカ川流域ほど急速に人工的な“浸食”が進んでいる場所はない。地表近くにあるオイルサンドを採掘するには、まず木々を切り払い、土砂や泥炭といった表土を取り除かなければならない。1バレル(約160リットル)の油をとるのに、表土を平均2トン掘り出し、さらにオイルサンドを2トン採掘する。その後、数バレルの熱湯をかけてビチューメンを砂から分離し、改質する。

 この工程で出た汚染水は、貯水池に流す。今ではこうした貯水池の総面積は130平方キロ(洞爺湖の2倍弱)に及ぶ。昨年4月、500羽ほどのカモの群れが、渡りの途中で貯水池に飛来し、油にまみれて死ぬという悲劇が起きた。

 オイルサンドから1バレルの合成原油を得る過程では、サウジアラビアの油田で同量の原油を採掘するのに比べ、3倍以上の二酸化炭素(CO2)が排出される。世界全体のCO2排出量にオイルサンド産業が占める割合は0.1%足らずと、今のところ地球温暖化に大きな影響を及ぼす量ではない。しかし、多くの環境保護活動家は、オイルサンドの開発をこのまま進めれば、それ以上に環境負荷の大きいオイルシェール(油頁岩(ゆけつがん))開発や石炭の液化事業といった、非従来型石油の開発に道を開くことになると警告する。

 「北米にとっても世界にとっても、オイルサンドをどうするかで未来が変わります」と、カナダの環境シンクタンク、ペンビナ研究所のサイモン・ダイヤーは話す。「代替エネルギー開発に本腰を入れるか、非従来型石油の開発を進めるか。たった1バレルの石油を得るために、4トンもの土砂の掘削をいとわないという事実が、採掘しやすい石油が枯渇しつつあることを物語っています」

 フォートマッケイ先住民居住区は長年、オイルサンド業界に抵抗を試みてきたが、はかばかしい成果は得られなかった。今はオイルサンド開発を逆に利用して、地元でできる事業の幅を広げようとしているのだと、ブーシャは話す。

 先住民居住区は失業率が5%未満。医療施設のほか、3LDKの公共住宅を100戸建設し、格安の家賃で地元の人々に提供している。川の対岸に広さ3300ヘクタールの第一級のオイルサンド地帯も所有し、主体的にオイルサンド開発を行うことも検討している。

何もかもけた違いの採掘現場

 アサバスカ川がなければ、オイルサンド産業がこの地域に押し寄せてくることもなかっただろう。この川が何千万年もの間、オイルサンド層の上に堆積した膨大な量の土砂を浸食したおかげで、鉱床が地表近くに(場所によっては地表に)分布するようになった。

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