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特集

カナダのオイルサンド

MARCH 2009


 それがブーシャとオイルサンド業界との初めての出合いだ。開発は90年代末以降、急ピッチで進み、アルバータ州北部のこの一帯の風景を大きく変えた。ブーシャ自身も、先住民居住区の首長となり、オイルサンド業界にサービスを提供する地元の経済団体「フォートマッケイ企業グループ」の会長も務めて、この業界とは切っても切れない関係にある。

 かつて森があった一帯は、今では大規模な露天掘りのオイルサンド採掘場となっている。ここではカナダ最大の石油会社シンクルードが、高さ20メートル近くもあろうかという電動ショベルでオイルサンドを掘り出し、80℃程度の熱湯(場合によっては苛性ソーダ)をかけて、砂に付着した粘っこいタール状の油を抽出している。この油は「ビチューメン」と呼ばれている。

 採掘場のそばには、煙突から炎を上げる設備がある。これはアップグレーダー(改質装置)と呼ばれ、ここで粘性の高いビチューメンに熱と圧力を加えて、「シンクルード・スウィート・ブレンド」という商品名の合成原油を生成する。この工程を「改質」という。こうしてようやくできた合成原油は、パイプラインでアルバータ州の州都エドモントンやオンタリオ州、米国の石油精製施設に送られる。

 採掘場の近くには、ミルドレッド湖よりもはるかに大きい、面積10平方キロの人工貯水池がある。ビチューメンを抽出する過程で出る有毒物質を含んだ排水や泥は、この池にためられる。池を囲む砂の堤は、砂の量では世界のダム湖の中でも最大級の規模に達している。

 この地でオイルサンドを採掘しているのは、シンクルード社だけではない。ブーシャのオフィスから半径35キロ圏内に6カ所の採掘場があり、日量75万バレル近い合成原油を生産している。開発は今後さらに進む予定だ。オイルサンド層が地下深くにある場所では、パイプを通して地下に大量の熱い蒸気を注入し、ビチューメンを流動化してポンプで汲み上げる「油層内回収法」という技術が使われる。

 オイルサンド業界は、2008年だけでもおよそ1兆8000億円、過去10年間では4兆5000億円以上の建設投資を行ってきた。2008年の秋に原油価格が急落するまでは、数年間でさらに9兆円が投じられ、2015年までに生産量は倍増し、そのほとんどは、新たに建設されるパイプラインで米国に輸出されると予想されていた。経済危機で多くの拡大計画が凍結されたが、長期的にはオイルサンド産業は今後も成長を続けると見込まれている。

 国際エネルギー機関(IEA)が昨年11月半ばに発表した報告書では、2030年には原油価格は1バレル120ドルに達すると予測されている。オイルサンドから合成原油をつくるには多額のコストがかかるが、原油価格がこのレベルで推移すれば、十分採算がとれる。

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