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黄金の魔力

JANUARY 2009

文=ブルック・ラーマー 写真=ランディ・オルソン

界的な金融危機の中で安全な資産として注目される“金”。だが、その輝きの裏には過酷な採掘現場の実態がある。人々が生命を賭してまで追い求める黄金の価値とは?

 南米ペルー、標高5100メートルのアンデスの山中。ここは世界一高いところにある町、ラ・リンコナダだ。町を見下ろす氷河の下には金鉱がある。一人の鉱夫が、コカの葉をほおばって飢えと疲れをまぎらわせながら、冷えびえとした坑道を下りる。その男、インカ族の血をひく44歳のフアン・アパサは、危険と隣あわせの坑内で、まるまる1カ月休みなしで働いてきた。爆発や有毒ガスの発生、坑道の崩落といった事故で命を落とした仲間も多い。

 アパサがこんなつらい労働に耐えてきたのは、月末の今日のためだ。この日だけは、4時間程度のシフトで掘り出した石を、持てるだけ自分のものにできる。これが給料の代わりとなるのだ。一種の運だめしのようなこの報酬システムは、カチョレオと呼ばれ、アンデス山脈の高地で古くから続くやり方だ。疲れた肩にかついで持ち出した袋一杯の岩石から、けっこうな量の金がとれる可能性もある。だが実際は、ほんの少ししか出てこないことがほとんどだ。

 それでもアパサは幸運を待ち続ける。「今日こそは大当たりが出るかも」と、金歯を見せて笑った。坑道に入るときにアパサがつぶやくのは、鉱山と黄金を支配する女神に捧げるケチュア語の祈りだ。アパサは鉱山を見下ろす雪山の斜面をあごで指す。「あれが眠れる美女だ。彼女に見放されたら、金を掘り当てられないし、ことによると生きて山を出られなくなる」

 氷河の下にあるこの金の鉱脈に、人々は500年以上も前から引きつけられてきた。最初に目をつけたのはインカ族で、永遠の輝きをもつこの金属を「太陽からしたたる汗」と考えた。金と銀を求めて新世界を侵略したスペイン人が、やがてその仲間に加わった。

 だが、この天空の町に3万人も押し寄せてきたのは、つい最近のことだ。それを後押ししているのが、金価格の高騰である。この8年間の上昇率は実に235%。人里離れた小さな鉱山町だったラ・リンコナダは、一獲千金を夢見る人々であふれかえるようになり、21世紀のゴールドラッシュの最前線となった。

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