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特集

知られざる
米大統領の日常

JANUARY 2009


 ウォルターズはこのことを人一倍よく知っている。彼は、ジェラルド・フォード第38代大統領(1974年8月-1977年1月)から、ジョージ・W・ブッシュ第43代大統領(2001年1月-2009年1月)まで、31年間もの長きにわたって米国で最も有名な場所の責任者を務めた。

 2007年に退職するまで、ウォルターズは6人の大統領の任期と、国内外で起きたさまざまな危機を目の当たりにしてきた。彼の役目は、執事やメード、料理人、接客係、エレベーター係、生花の管理を担当するフローリスト、歴史記録係、大工、電気工、配管工など90人から成るスタッフとともに、ホワイトハウスの維持管理にあたることだ。

 言ってみれば世界で最も限定された客しか受け入れないホテルを運営するようなものだ。ここがホテルと違うのは、住居、オフィス、米国の歴史が刻みこまれた博物館、国家レベルの社交の場という四つの機能をあわせもつ建物ということだ。信じられないかもしれないが、ホワイトハウスは1週間に最大3万人もの客を迎え入れることもある。

 陸軍の退役軍人であるウォルターズは、かつてエグゼクティブ・プロテクティブ・サービス(現在のシークレットサービス制服部隊)の警護官でもあり、9時から5時という通常の業務時間では決して終わらない仕事を、軍隊並みの正確さで、最大限に思慮を尽くして実行した。一番大変な仕事は1月20日に行われる大統領就任式の当日だったと、ウォルターズは振り返る。なにしろ任期を終えた前大統領一家が午前10時頃ホワイトハウスを去り、その日の午後4時には新しい大統領一家が到着するのだ。

前大統領の荷物を運び出した後、今度は新しい一家の靴下をタンスの引き出しにしまい、家具を配置し、絵を壁にかけ、家族写真を飾り、キッチンには好物のスナックを用意しなければならない。こうした仕事のすべてを6時間以内に完了させるのがウォルターズの任務だった。準備を早目に始めることはできない。新大統領の正式な就任は1月20日正午。新しい一家の引っ越し荷物を載せた護衛つきのトラックは、その2時間前の午前10時にならなければホワイトハウスに到着しない。この時刻は、任期を終えた大統領が連邦議会議事堂に向けて出発する時刻でもあるのだ。

 時間内にすべてを終わらせるため、ウォルターズは90人のスタッフを総動員して、役割ごとにチームを組んで分担させる。この日に備え、数カ月も前から口頭でのリハーサルが何度も繰り返される。だが、1974年にウォーターゲート事件の責任をとって任期終了前に辞任したリチャード・ニクソン第37代大統領(1969年1月-1974年8月)のときは、ぶっつけ本番で作業しなければならなかった。大統領夫人が、引っ越しの荷造り用の箱が欲しいと要望してきたという知らせがあり、「そのとき初めて大統領の辞任を知りました」と、ホワイトハウスの歴史記録係ベティー・C・モンクマンは話す。

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