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盗まれる聖地の宝

DECEMBER 2008


 ヨルダン川西岸は文明発祥の地であり、定住生活や農耕はここから始まった。のちにはエジプト、アッシリア、バビロニア、ペルシャ、ギリシャ、ローマなど、多くの古代帝国の征服ルートとなった。さらにここは、ユダヤ教やキリスト教、イスラム教の信者にとっての聖地だ。

 だがいま、西岸地区のかけがえのない遺産は急速に失われつつある。エルサレムにあるアル・クドス大学考古学研究所のサラーフ・アル・フーダリエ所長はこう嘆く。「将来ここを発掘しても、何が見つかるのか、見当もつきません。盗掘者たちは、パレスチナ人だけでなく、全人類にとっての文化遺産を破壊しているのです」

 ヘブロンの北東、丘の中腹に位置する町サイルでは、ある中年男が自分の“仕事”を誇らしげに語ってくれた。遺跡の盗掘は、この男が知っている唯一の仕事だ。「(1967年に)イスラエルに占領されてからは、仕事も食べものもない少年時代だったよ。誰もが遺跡を掘り返した。それを見て、遺跡が宝の山だと知ったんだ」

 今も状況はさほど変わっていない。古美術品を違法に売買している別の男は、「ここの経済はめちゃめちゃだ。それでも俺たちは、家族を養わなきゃならないからね」と話す。

 パレスチナ自治政府は遺跡の破壊や、古美術品の売買と所有を法律で禁じているが、盗掘は野放し状態だ。刑罰も軽く、たいてい2~3週間投獄されるのみ。文化遺産の価値について、当局がもっと住民を教育すべきだと批判する声もある。しかし、ヨルダン川西岸はパレスチナ自治政府の管轄区域とイスラエルの入植地がモザイク状に入り組んでいて、取り締まりの足かせとなっている。

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