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特集

見えはじめた
火星の素顔

DECEMBER 2008

文=ジョン・アップダイク

球から8000万キロの彼方にある火星。NASA(米航空宇宙局)の最新の探査で、その素顔が明らかになりつつある。米国を代表する作家による寄稿。

見えはじめた火星の素顔
本誌英語版の写真編集者であるビル・ダウシットが、長年にわたり人々を魅了してきた火星の姿と、その探査の歴史について解説する。

動画翻訳

見えはじめた火星の素顔

20世紀初めに撮影された火星の写真はあまり精密ではなかったため
火星の詳細は謎に包まれたままでした
このため 運河や文明の存在など火星に関する様々な憶測が飛び交いました
一方 火星についての素晴らしい物語も数多く生まれています
最も有名な作品は 1950年代に書かれたレイ・ブラッドベリの「火星年代記」でしょう
1976年 バイキング1号の着陸成功によって私たちは 火星地表の画像を初めて目にしました
実際の火星には運河や火星人は存在しておらず

岩石が散らばる砂漠のような世界が広がっていました
その後 技術の進歩によって周回機や着陸船が火星へ到達する確率が高まり
探査車のわだちなど人類が火星にたどり着いた証を残すまでになりました
現在では 火星軌道を周回する人工衛星により驚くほど精細な画像が地球に送られてきます
これにより火星における砂丘 浸食 嵐など
かつては想像もできなかった火星の姿が明らかになってきました
なだれなどの地質学上の現象を周回軌道からとらえることも可能です
また 時間をかけて観察すると地下に液体が流れているような模様が見えます
ごく最近 火星の極地方に送り込まれた探査機フェニックスは
写真に見られるような水の氷の痕跡を確認しました
火星は 気候 地質 地形などが非常に複雑な星であることが分かっています
地下には 豊かな水が流れているかもしれません真実は 誰にも分からないのです

 火星は、古くから人間の想像力をかきたててきた。地上から見ると、天空を不規則に移動するように見えるこの赤い星を、古代人は凶事や暴力の象徴と考えた。ギリシャ人は火星を軍神アレスとみなし、バビロニア人は冥界の王にちなんでネルガルと名付けた。古代中国人はこの星を榮惑(燃える星 (榮の下は火))と呼んだ。1543年に天文学者コペルニクスが地動説を唱えたのちも、火星の特異な軌道の謎は解明されなかった。

 1609年、ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーが、惑星の軌道は円ではなく、それぞれが太陽を中心に楕円を描きながら公転していることを突きとめて、この謎を解き明かした。ちょうどこの年、イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが、史上初めて、天体望遠鏡を使って火星を観察したのだった。

 17世紀半ばには、天体望遠鏡の性能が向上し、季節によって拡大と後退を繰り返す、ドライアイスでできた極冠や、浅い海と考えられた、黒ずんだ大シルティス平原などが観測できるようになった。イタリアの天文学者ジョバンニ・カッシーニは特徴的な地形を観測して、火星の自転周期が地球の自転周期24時間よりも40分長いと導き出した。彼の計算は、実際の自転周期と3分しか狂いがない正確なものだった。

 その後、天体望遠鏡がさらなる進歩を遂げると、火星の精細な地図が作成されるようになる。海や沼地のような地形が確認され、そこでは季節ごとの極冠の消長とともに、植物らしきものが現れては消えた。とりわけ熱心に火星の地図を作成した一人が、19世紀のイタリアの天文学者ジョバンニ・スキヤパレーリだった。彼は海や湖と思われる部分を結ぶ水路のようなものを、イタリア語で「カナーレ」と呼んだ。この単語には、「海峡」という意味もあるが、英語では、人工物を指す「運河」という言葉が当てられ、人々の想像力をかきたてた。

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