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特集

米国の
トレイルを歩く

NOVEMBER 2008


 こんなふうに自然の美しさや静けさを味わうことができるのは、アーンストのような人々の努力のおかげと言っていい。オザーク高原トレイルのような国立レクリエーショントレイルは、米国全土に1000カ所を超える。ただし、連邦政府の指定を受けているにもかかわらず、オザークをはじめ多くのトレイルの運営はボランティアの力に頼っている状況だ。アーンストのような人々が、苦心して道をひらき、資金を集め、担当する区間を維持管理している。

 アーンストは、オザーク高原トレイルの生みの親ではないにせよ、育ての親であることは間違いない。オザーク国有林当局がこのトレイルを設立したのは、アウトドア志向の高まった1970年代。当時は何万人もの米国人が各地のトレイルや川に繰り出し、ハイキングやカヌーを楽しんだ。ところがロナルド・レーガンが政権についた1980年代には、緊縮財政のあおりで米国森林局の予算は縮小され、設立間もないオザーク高原トレイルは、外部の支援なしには完成が望めない状況におちいっていた。

 オザーク国有林で狩りをしながら育ったアーンストは、トレイルの建設が中断すると、故郷のアーカンソー州ファイエットビルで、ある集会を開いた。「トレイルの完成済みの区間を維持管理し、ときには建設にも参加してくれる人たちを集めることが目標でした。最初の集会の出席者は50人。こうして『オザーク高原トレイル協会』が発足したのです」

 全員がボランティアからなる同協会は、今では20以上の州にまたがる400人以上のメンバーを抱えるまでになった。彼らは1984年にトレイルを完成させると、各人が3~10キロの区間を受け持ち、維持管理を続けている。

 「コースのレイアウトは抜群です。なにしろハイカー自身が設計したんですから」と、アーンストは言う。「私は『手作りのトレイル』と呼んでいます。当初はみんな素人でしたが、すぐに専門家のようになって、自分たちの望むトレイルを、自分たちの望む方法でつくりました」

 54マイル(86キロ)標識付近の区間を建設した時のこと。当初、森林局はコストと労力を節約するため、すでにあった古い道路沿いにつくってはどうかと提案した。ところがアーンストたちが周辺を探索すると、今はマリノニ景勝地区と呼ばれる美しい窪地が見つかった。

 「その窪地にトレイルを通してくれるよう、私は森林局にかけ合いました。ところが彼らは建設が難しくなるからと、いい顔をしない。それで私は言ったんです。『私たちがトレイルを歩くのは、まさにこういう場所を見るためであって、どれだけ建設が難しくなるかは問題ではありません。トレイルは高速道路じゃないんですから』とね」と、アーンストは振り返った。

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