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星空をとりもどせ

NOVEMBER 2008


生き物の暮らしを脅かす

 私たちは夜を何もない時間と決めつけて、まったく遠慮なく侵略してきた。だがそれは、とんでもないまちがいだ。哺乳動物ひとつとっても、夜行性の種は驚くほど多い。問題は、こうした生き物たちに対して光が大きな力をもつことだ。明るいところがあると、つい磁石のように吸いよせられてしまう。

 海鳥の仲間や、スズメなどよくさえずる鳥の仲間などは、地上のサーチライトや海上油田の炎に本能的に引きつけられ、そのまわりを飛びまわるうちに疲れきって墜落したりする。夜に渡りをする鳥は、背が高く照明が明るいビルに激突することも多い。なかでも、渡りの経験がない若い鳥は犠牲になりやすいという。

 鳥だけでなく、虫もまた光に集まってくる。街灯に群がる虫は、コウモリにとって格好の獲物だ。だがスイスの渓谷では、街灯が設置されてから、キクガシラコウモリが激減した。街灯の虫をねらうアブラコウモリが増えたせいで、すみかを奪われてしまった可能性がある。

 このほか、砂漠のげっ歯類やオオコウモリ、フクロネズミ、アナグマといった夜行性の動物は、餌探しに慎重になった。夜が明るくて1年中満月のような状態なので、狩りをしようにも捕食動物に簡単に見つかってしまうのだ。

 人工の光を浴びると、とんでもない時間に鳴きだす鳥もいる。ムクドリモドキやサヨナキドリなどがそうだ。人工の光によって昼が長くなると、多くの鳥が繁殖行動を早めるとする研究もある。渡り鳥の移動スケジュールもずれてくるようだ。英国で越冬する、あるコハクチョウの群れを調べたところ、昼が長くなると餌を食べる時間が延びて、脂肪のつくペースが速くなった。その結果、通常より早くシベリアへの移動を開始したのだ。出発が早いと、当然のことながら到着するのも早くなり、巣づくりの時期にうまく合わない危険もある。

 ウミガメは、真っ暗な砂浜で産卵する習性がある。だが、その産卵に適した砂浜は年々減るばかりだ。孵化した子ガメは、明るさを頼りに海に向かうが(海は光を反射するので砂浜より明るい)、砂浜に人工光があると、混乱して陸のほうに進んでしまう。米国フロリダ州の海岸だけでも、混乱して死ぬ子ガメは毎年数万匹にのぼる。高速道路のそばに生息するカエルもまた、こうこうと輝く照明に惑わされている。夜になっても暗くならない環境で暮らすうちに、夜の大合唱をはじめとする行動パターンがすっかり狂ってしまうのだ。

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