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特集

サルの楽園
ビオコ

OCTOBER 2008


 2007年10月、BBPPの働きかけを受けて、赤道ギニアのテオドロ・オビアン・ンゲマ・ムバソゴ大統領は霊長類の狩猟、その肉の販売と消費を禁止した。BBPPの調査グループが再び現地を訪れたのは今年1月で、禁止令が敷かれて2カ月が経過していた。果たしてサルの数はどの程度増えているのだろう。撃ち殺すのではなく、数を数えにきた人間に対して、サルはどんな反応を示すだろう。まもなく研究者たちはそうした疑問の答えを見つけることとなった。

 グループが調査に出た日の夕方のことだ。眠りに就く前にサルたちが鳴き声を交わす時間のはずだが、その日、カルデラの森は奇妙な静けさに包まれていた。この森には、ビオコ島にいる7種のサルすべてが生息しているので、ブティンスキーはにぎやかなコーラスが聞こえてくるものと期待していた。だが虫やカエルの鳴き声のほかは何も聞こえてこない。ブティンスキーは歩き続けた。15メートルほど進むごとに立ち止まり、周囲を見回して耳を澄ませた。やがて彼は困惑した表情を浮かべ、こう言った。「サルたちは森の別の場所へ移動して眠ることにしたようだ」

 次の瞬間、大型犬ほどの大きさの毛むくじゃらの生き物が2頭、私たちの頭上ですばやく動いた。2頭は、葉の生い茂った木の頂から隣の木へと飛び移っていった。やがて2頭は、鳴き声ひとつ立てず、峡谷の斜面を飛び越えて、夕闇に包まれた森の奥深くに姿を消した。

 翌朝、ブティンスキーは再びカルデラへと向かった。今度はアカミミグエノンの群れを見つけたが、人間の姿を見た途端、サルたちは恐怖で目を見開き、甲高い声を上げはじめた。母ザルは子どもを胸にしっかりと抱き、群れは木の枝を揺らしながら、大あわてで逃げ去った。

 研究者たちが目にできるのは、こうした逃げていくサルの姿ばかりだった。調査を開始して最初の3日間、調査グループは島の南岸からカルデラの斜面を600メートルほど登ったが、その間に目撃したサルたちはみな、警戒の声を上げるとカルデラを貫く谷へと消えていった。

 だが4日目に出会ったサルたちは、それほど人間を恐れなかった。調査グループは、小さな溶岩が散乱する、勾配の急なぬかるんだ山道を登り降りして、カルデラの北端に到達した。そこは、神聖な雰囲気が漂う場所だった。

 密猟が増えているにもかかわらず、この一帯に広がる森には実に多くのサルが生息していた。10頭ほどのアカミミグエノンが、私たちを警戒して葉に覆われた枝に飛び移り、鼻を鳴らして仲間に注意を促した。さらに10メートルほど進むと、クロコロブスの小さな群れが、葉を食べるのをやめて逃げていった。その先では、濃灰色をした1頭のプロイスグエノンが、餌を食べていた丈の低い草地から飛び出してマホガニーの巨木を登っていき、隣の木に飛び移った。遠くでは、ペナントアカコロブスの群れが声高に叫び、クラウングエノンがよく響く低い叫び声を上げた。

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