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特集

サルの楽園
ビオコ

OCTOBER 2008


 ハーンは「ビオコ島生物多様性保護プログラム(BBPP)」と呼ばれる組織を設立し、毎年1月には、地域の学生も含めた研究者と学生のグループをともなって島を訪れ、大規模な生物多様性の調査に取り組んでいる。今年の調査では、「ナショナル ジオグラフィック」誌や国際的な自然保護団体であるコンサベーション・インターナショナル、国際環境保護写真家連盟(ILCP)の支援を受け、写真やビデオなどを駆使した12日間にわたる短期環境評価視覚調査(RAVE)を実施。できるだけ多くのサルや、ビオコ島に生息する多様な生物を観察・記録した。こうした生物は、これまで島の歴史に守られてきたが、現在は密猟の横行で絶滅の危機にさらされている。

 ヨーロッパ人はかつて、この島にアフリカにおける最初の植民地を築こうとした。だが、それ以前にアフリカ本土から島に移り住んでいたブビ族は、白人たちに協力することを拒み、植民地建設の試みをことごとく挫(くじ)いていった。しかし1827年、英国が西アフリカの奴隷貿易撲滅のための拠点を島北部のマラボ(現在の赤道ギニアの首都)に設け、その後、島の対岸にあるアフリカ本土のリオ・ムニ地区を植民地化したスペインが、島と本土の両方を領有した。それ以降、ビオコ島とリオ・ムニはスペイン領ギニアと呼ばれたが、1968年にスペインから独立し、赤道ギニア共和国が誕生した。

 ビオコ島では、アフリカ本土から移住してきたファン族がブビ族から支配権を奪っていた。そのため、独立後はブビ族がビオコ島の分離独立を掲げて政府軍と衝突を繰り返す事態が続いている。対立するファン族とブビ族だが、両者とも島の動物を狩って食べる点では共通している。そのため、島の生態系を守ろうとする研究者の熱意には無関心だ。。

 島の自然を守る努力は、沖合の油田開発によっても阻まれている。1990年代、島周辺の海域で原油と天然ガスの豊かな鉱床が発見されたのだ。現在、米国の石油会社が日量40万バレルの原油と天然ガスを生産し、島は潤っている。そのため、現金を手にして、好物のサルの肉を買おうとする人も増えているのだ。

 今回の調査に参加した霊長類学者のトム・ブティンスキーは、ビオコ島を貴重なサル類の生息地であると認めた、国際自然保護連合の報告を受け、1986年に初めて島を訪れた。それまでの20年間以上、島には生物学者が訪れておらず、ブティンスキーはサルたちが狩猟でほぼ絶滅したのではないかと危惧していた。

20年前の無警戒なサル

 だが意外にも、島には数多くのサルがいた。ブビ族の暴動を阻止しようと、ファン族系政府が1974年から1986年にかけて住民が所有する散弾銃を押収していたため、サルの生息数は回復していたのだ。また、スペイン人入植者がカカオ豆農園のために切り開いた多雨林は、彼らが去った後、かつての豊かな森に戻っていた。こうした状況のなかで、サルたちは活発に生息地を広げていたのだ。

 「当時はグラン・カルデラの調査地を1キロ進むごとに、ほぼ2つの割合でサルの群れが見つかったものです」と、ブティンスキーは語る。サルは数が多く、人間を見ても恐れなかった。「なんて無警戒なんだと思いましたよ。近くに寄ってじっくり観察できました」

 だが、不吉な兆候もあった。10週間にわたる調査期間中、ブティンスキーは散弾銃を手にしたファン族のハンターを14人も見かけ、ダイカーやサル、小型の哺乳類を捕らえるための罠(わな)を数多く目にした。同じ頃、首都のマラボでは、サルなどの野生動物の肉「ブッシュ・ミート」の取引が増えていた。アフリカ西部の多くの地方と同様に、この島でも、とりわけサルの肉は珍味として人気が高く、鶏肉よりはるかに高価で売られているのだ。

 ビオコ島生物多様性保護プログラム(BBPP)は過去十年間にわたって、食肉市場で売られているサルの頭数を記録してきた。そして、今年3月末、その数が2万頭を突破した。ビオコ島に生息する7種のサルすべてが絶滅の危機にあることは明らかだ。

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