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特集

地球にひとつの生命
海の小さな人気者
ウミウシ

AUGUST 2008


 ウミウシは、自分たちの美しさにはたぶん気づいていないだろう。小さな目は明暗の見分けがつく程度で、周囲の様子を知るには、頭に生えた触角や、口元にあるヒゲのような口触手(こうしょくしゅ)で、においや味、感触をとらえ、獲物のありかを察知する。ウミウシはたいてい肉食で、サンゴやカイメン、フジツボの仲間、卵、小魚などのほか、ほかのウミウシを食べることもある。

 雌雄同体であることは、ウミウシの生き残りを有利にしている。各個体が雄と雌、両方の生殖器官をもっているため、同種の仲間を見つけさえすれば、相手の性別については心配無用。しかも1回の生殖で、互いに相手を受精させられる。卵の形はらせん状、リボン状、もつれた塊状などさまざまで、一度に産む数は最大200万個に及ぶ。

 ウミウシ同士の出会いはハッピーエンドとは限らず、一方が相手を食べてしまうこともある(種が異なる場合に多い)。毒をおそれずウミウシを捕食する生物は、ほかにもいる。ある種の魚、ウミグモ、カメ、ヒトデ、少数のカニ、それに人間だ。ロシア・アラスカ沖の島々や南米のチリなどでは、毒のある部位を取り除いて、ウミウシを食べる人々がいる。食べ方は生のまま、あるいは焼いたりゆでたりとさまざまだが、実際に食べてみた写真家のデビッド・デュビレは「消しゴムを噛んでいるみたいだった」と言う。

 科学の進歩にも、ウミウシたちは貢献している。神経系は学習や記憶のメカニズムの研究に使われ、防御のための毒からは、心臓や骨、脳の病気の治療に役立つ化学物質が単離できないかと研究が進められている。

 もっとも、ウミウシというふしぎな生物には、まだまだ謎がたくさんある。発見ずみの種は全体の半分程度とみられ、既知の種についてもわからないことだらけだ。ウミウシのほとんどは1年で生涯を終える。そして、骨も殻もないその体は、短くも色鮮やかな生の痕跡をまったく残さず、跡形もなく消えてしまうのだ。

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