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特集

進化の謎を解く
恐竜の墓場

AUGUST 2008

文=ピーター・グウィン 写真=アイラ・ブロック

国北西部のジュンガル盆地で、1億6000万年前の恐竜の化石が折り重なるように見つかった。謎に包まれたジュラ紀中期の恐竜たちが姿を現した。

 断末魔の叫びを聞きつけた恐竜は、獲物にありつけると思って、この場所にやって来たのだろうか。しかし、泥沼に足をとられた瞬間、それどころではなくなったに違いない。いくらもがいても、足は底に届かない。やがて恐竜は疲れ果て、静かに運命を受けいれるが、その気配を察して、また別の恐竜が近づいてくる。“死の底なし沼”はこうして恐竜を次々とのみ込み、1億6000万年の時を経て、岩となった。

 それが、中国北西部に広がるジュンガル盆地で発見された地層だ。古生物学者のジェームズ・クラークと徐星(シゥシン)は、ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受けて7年前からこの地域の発掘を続けている。恐竜の化石が折り重なる地層も、彼らの発見の一つだが、これはほんの始まりにすぎない。1億6500万 - 1億5500万年前までのおよそ1000万年は、地球の歴史上、最も謎に包まれている。この時代は地殻変動が繰り返し起こり、大陸が分裂し、恐竜がすさまじい勢いで進化していた。

 大陸が分裂して海に隔てられると、生物は行き来ができなくなった。こうした状況のなか、恐竜は多様な進化をみせ始め、角竜やステゴサウルス、ティラノサウルスといった、誰もが知っているような恐竜が出現することとなったのだ。しかし、1億6500万年前から1000万年ほどの間に生息したと考えられる陸生生物の化石は、これまでほとんど見つかっておらず、研究者たちの頭を悩ませてきた。「恐竜の進化の過程をたどっていくと、この時代になって足跡が消えてしまうんです」と、米国ジョージ・ワシントン大学教授のクラークは語る。

 2000年、中国科学院古脊椎・古人類研究所の若手研究者、徐星が率いるジュンガル盆地の事前調査にクラークも加わることとなった。そして翌年には、ジュラ紀中期の岩石が露出している、石樹溝(シーシューゴウ)と呼ばれる累層の発掘調査が本格的に開始されたのだ。そこはゴビ砂漠の西端に沿って、乾ききった荒地と砂丘が広がる一帯だが、1億6000万年前は、火山が点在する湿地帯だった。「この場所を調査地に選んだのは、小さな生物の化石が数多く出土していたからです」とクラークは話す。

 発掘が始まると、それまで知られていなかったカメやワニ類、翼竜、原始的な哺乳類の化石が次々と見つかった。それぞれの子孫種の特徴がわかる化石も多い。例えば、ある角竜の頭骨にある輪のような隆起は、1億年近い進化を経てトリケラトプスの巨大なひだ飾りとなる。ほかにも、鎧に身を固めたステゴサウルスの祖先にあたる恐竜の化石も見つかった。

 この発掘調査で、クラークと徐は獣脚類の化石をぜひとも発見したいと願っていた。獣脚類は二足歩行をする肉食恐竜で、鳥類の遠い祖先にあたる。だから、正体不明の獣脚類の骨格が見つかったとき、発掘現場は色めき立った。そして、注意深く化石の周辺を掘っていくと、獣脚類の化石が次々と出てきたのだ。「最初に発見した獣脚類の下に、もう1頭いることがわかった。そして、さらにその下にもいたのです」と、クラークは振り返る。

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