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特集

地球の悲鳴
温暖化で加速する
山火事

JULY 2008

文=ニール・シェイ 写真=マーク・ティッセン

国西部では、春の終わりから秋にかけて山火事が多発する。近年、温暖化の影響で発生する期間が長くなり、住民たちは不安な季節を迎えている。

 その若者たちは、モミやポンデローサマツの木立の下に茂る草地に分け入り、落ち着いた様子で森に火をつけた。手にした着火用のトーチを絵筆のように振るい、ガソリンとディーゼル油を辺り一面にまいて点火していく。炎はゆっくりと草地を這(は)い、低く垂れた枝を燃やす。数分ごとに1本また1本とモミの木に燃え移り、閃光(せん こう)を発し、轟音(ごう おん)を立てて炎に包まれた。木々は瞬く間に燃え、黒焦げになってくすぶり続けている。

 若者たちは消防隊員で、「迎え火」と呼ばれるこの作業に励んでいた。2007年7月のある土曜日の昼前、米国アイダホ州の各地で山火事が発生し、避難勧告が次々と出されていた。今、隊員たちが消火にあたっているのは、“ラッキー”と呼ばれる山火事で、州都ボイシーから車で2時間ほど北にある国有林で起きた。米国西部の多くの山火事と同様、ラッキーも落雷が原因で発生し、2週間かけて550ヘクタールあまりを焼き尽くした。

 隊員たちは何時間も、森に火をつけ続けた。迎え火は、山火事の進路から燃えそうな草木をなくし、延焼を食い止めるのが目的だ。だが山火事は、必ずと言ってよいほど抜け道を見つけて燃え広がる。しかも、迎え火のせいで火災がかえって拡大することも多く、そうなると非難の矛先は消防隊員に向けられる。

 午後遅くなって隊員たちは手を休め、作業の成果を眺めた。辺りには黒焦げになった土地が広がっている。やがて風向きが変わり、弱い北風が吹き始めた。空を見上げると、真っ赤に燃える火の粉が、まだ燃えていない森に向かって飛んでいった。「まずいぞ」。そう言うと、隊員たちは茂みに駆け込み、新たに火がついた場所がないか探した。幸いにも、火が燃え移った場所はなく、今のところ迎え火は期待通りの成果を挙げている。一歩間違えば大惨事になりかねないが、米国では、迎え火で延焼を食い止め、自然を火事から守るのだ。

 植物は燃えると、炭素化合物や水素といった可燃性の高い物質を放出する。こうした物質が酸素と反応して、さらなるエネルギーを放出し、連鎖反応を引き起こす。周囲の空気は温まって上昇し、風を発生させて炎をあおることもあるのだ。

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