/2008年5月号

トップ > マガジン > 2008年5月号 > 百花繚乱 北京の新建築


定期購読

日経ナショナル ジオグラフィック 翻訳講座 春期受講生募集中 詳しくはこちら

ナショジオクイズ

Q:イタリアの海の中に建設されたこれら建物の用途は?

  • 海中食堂
  • 海中公園
  • 海中農場

答えを見る

ナショジオとつながる



特集

百花繚乱
北京の新建築

MAY 2008


 そして今日、北京は国際都市として再開発されている。新たな建物がオープンするたびに、中国当局はそれが中国の“ソフトパワー”、すなわち文化や価値観、政策などの魅力を体現していると好んで口にする。国際社会のみなさん、中国を侵略国家だ、軍事大国だなどと恐れないでくださいね、というわけだ。

 このメッセージを最も明確に伝えるのが、五輪開催に向けた、400億ドルの建設ラッシュだ。中国は巨大で強力だが、才気に富み、洗練され、開かれた面もあるとビル群は語る。とりわけ目を引くのは、鳥の巣のようなメインスタジアム「国家体育場」、青い泡に包まれた「国家水泳センター」、そして巨大な卵形の国立劇場「国家大劇院」だ。ねじれたドーナツを思わせる変わり種もある。中国の国営放送局、中国中央電視台の新本社ビルだ。現在建設中のこのビルは、傾斜した二つの棟が空中でそれぞれ横に折れ曲がって連結する。実用性を重視する北京市民は、傾斜したビルを仰ぎ見ては、倒壊しないだろうかと声高に話している。

 こうした建造物の多くは、外国人好みのデザインだという不満もよく耳にする。「中国人は自国のデザインに自信がもてず、新たなものを試したがっています」と、北京の雑誌『中華遺産』の編集者、杜暁東は言う。「その結果、世界最新のビルが近隣にある古くからの建物と隔絶し、よそよそしく並ぶことになるのです」。嘆かわしいことに、北京で古くからの町並みを残す「胡同」と呼ばれる路地が、建設ブームによって次々と破壊されつつある。住民たちは、地元の役人や開発業者の懐を潤す事業のために、移転を余儀なくされている。

 北京五輪の報道センター「デジタル北京ビル」を設計した中国人建築家の朱と呉桐は、古い町並みの保存や活用を試みる数少ない建築家だ。歴史地区の建物を取り壊さずに、古い工場に中庭やガラスの壁面を設けて、町並みを見渡せるように改装するといったやりかたで、再開発を手がけている。こうした試みは、古いものと新しいものを、変わりゆく古都北京にふさわしく調和させることができるはずだ。

 王たち出稼ぎ労働者は、北京五輪の開幕を待たずに帰郷するか、別の職場に移ることになりそうだ。五輪のテレビ中継が始まる時、そこにそれを建てた人々の居場所はほとんどない。

Back2

 

 

 

 

 

 


ナショナル ジオグラフィック バックナンバー