/2008年5月号

トップ > マガジン > 2008年5月号 > 特集:百花繚乱 北京の新建築


定期購読

翻訳講座

ナショジオクイズ

キリン科の動物は次のうちどれ?

  • シマウマ
  • オカピ
  • トムソンガゼル

答えを見る

ナショジオとつながる



特集

百花繚乱
北京の新建築

MAY 2008

文=テッド・C・フィッシュマン 写真=グレッグ・ジラード

の巣、泡、卵、ねじれたドーナツ……。夏の五輪開催を目前に、奇想天外な建物が建設されている北京。急ピッチで進む大事業を支える人々を追う。

 午前11時45分。中国世界貿易センタータワーの建設作業員たちが、昼休みを取る時間だ。ヘルメットをかぶった何千人もの男たちが、完成の暁には北京随一の高さとなる74階建て高層ビルの建設現場からあふれ出す。河南省の農村出身の王は51歳で、換気シャフトを設置するチームのリーダーだ。部下の中には農村から出てきたばかりの十代の若者もいる。

 彼らのような未熟練作業員は100万人以上もいて、北京で進行中の何千という建設事業を支えている。かつては故宮や、巨大だが単調な公共建築物ばかりが目立つ平板な景観だった北京は、今“摩天楼フィーバー”中だ。

 過去30年以上にわたり、中国経済が年平均10%近いGDP成長率を達成できたのは、世界水準の技術を、大量の廉価な労働力と結びつけてきたからだ。そのおかげで中国は「建築家の遊び場」にもなった。1990年代には、上海で斬新な高層ビルが林立。そして今、北京では、8月開催の夏季オリンピックに向けて、異様な急ピッチで建設が進む。

 北京の最新の建造物は、外観も技術も従来の限界を超越している。大規模な建設事業の大半は、外国人の建築家が設計を手がけたものだ。中国の建築主は革新を望むがゆえに海外に人材を求めるのだと、米国人建築家のブラッド・パーキンスは語る。1960年代後半からの文化大革命時代には、建築家は芸術家ではなく技師とされたし、10年前まで民間の建設会社もほとんどなかった。「私のような外国人を雇うことで、中国人は失われた30~40年の経験を買っているのです」と、パーキンスは言う。

 装飾的な上部構造や入り組んだ格子細工、実験的な建築技法。外国人建築家たちが本国ではコスト面で二の足を踏むこういった設計は、中国の低賃金労働者のおかげで実現可能になる。中国世界貿易センタータワーの優美な輪郭は、地震や強風に備える革新的な交差筋交いや、太陽光を最大限に採り入れるガラス製の羽板(ルーバー)を採用することで生まれた。同時に、作業効率を大幅にアップさせる工法も採用。外壁に使うガラスを現場でカットするのではなく、前もってパーツを用意し、窓枠にはめ込むだけで事足りるようにした。24時間体制で大勢の作業員を働かせ、大規模な建設事業を3~4年以内という短期間で完成させることも、ここでは珍しくない。

 中国の指導者たちは、自らの権力と信念を誇示すべく首都を改造してきた。15世紀に造営された故宮は、明朝の皇帝が天との結びつきを世に示すために建造した。共産党が権力を掌握した1950潤`60年代には、労働者の団結と毛沢東の絶対的な支配力を示すために、旧ソ連風の公会堂や競技場などが造られた。

1Next


ナショナル ジオグラフィック バックナンバー