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特集

ベラ15歳
台頭する中流層

MAY 2008

文=ズァン・トンホー 写真=ランディ・オルソン

の言うとおり勉強し、エリート中学校にも合格した。でも、もう言いなりにはならない。15歳の少女ベラに見る、中国で台頭する新・中流層の苦悩。

 周佳穎(チョウ・ジャアイン)は4歳のとき、英会話を習いはじめ、ベラという英語名ももらった。将来は海外の大学に進んでほしいというのが両親の希望だ。5歳で演劇を、8歳からは行儀作法を教わり、情操教育に良いというのでピアノも習いはじめた。夏には水泳教室に通った。弁護士になるというベラの夢をかなえるには、背が高くないとだめだと両親が考えたからだ。

 10歳、つまり小学5年生になるころには、将来の可能性は無限に広がっていたが、生活は軍隊顔負けの厳しいものになっていた。学校を終えて帰宅すると、ひとりで宿題をしながら両親の帰りを待つ。夕食と入浴の後はピアノの練習。たまにテレビも見るが、許されるのはニュースだけ。土曜日には作文教室と算数塾、日曜日はピアノ教室と進学塾。学校が早く終わる金曜日の午後だけは、ほっとひと息つける。ベラにとっては、独房の窓から見えるつかの間の青空といったところだろう。

 中国で台頭しつつある、いわゆる新中流層の人々にとって、いまは希望にあふれる時代だが、同時に不安も抱えている。上昇するチャンスはたくさん転がっているが、流れに乗りつづけるのはたいへんだ。やっとのことで希望を実現しても、すぐに手あかがついて、もっと新しいもの、もっと良いものが欲しくなる。改装したばかりのマンションもすぐに古びて見えるし、携帯電話もカメラ付きでカラー液晶画面じゃないと時代遅れだ。変化のない社会主義国で生まれ育った人びとにとって、自由はかならずしも解放ではなかった。遅れをとりたくなければ、必死で走りつづけなければならない。ある調査によると、中国の都市生活者の45%はストレスによる健康リスクを抱えていて、その多くがなんと高校生だという。

 5年生のベラは、いちばん大変な時期を迎えていた。この学年の終わりに、中学校の入学試験があるのだ。生徒はみんな、自分の順位を知っている。教師がテスト答案を返すとき、成績順にグループ分けするからだ。ベラの順位は、25人中12位か13位。ちょっと油断するともっと下がってしまう。

 ベラは日本が大嫌いだ。1937年に南京で、日本軍が37万人の中国人を殺したと教科書に書いてある。彼女は、よその国のことにすぐ口を出す米国も嫌いだ。でもベラは英語をけっこう上手に話す-“Men like to smoke and drink beer, wine, and whiskey”。お気に入りのレストランはピザハット。ケンタッキーのスパイシーチキンも好きだし、フラフープは最高2000回の記録がある。

 ベラが世界でいちばん好きな場所は、南京路にある宝大祥百貨商店だ。ここの広大な文具売り場で、ベラは慎重に消しゴムを選ぶ。彼女の消しゴムコレクションは30個になった。ハンバーガー型やキャラクターものまで、ビニール包装もそのままに、クッキー缶に大切にしまってある。テストの点が良いと、両親は好きなものを買ってくれる。でも成績が悪いと、家で自由にさせてもらえない。ベラの得意科目は国語だ。とくに作文を書かせると、日常生活の何気ない題材からも巧みに教訓を引きだす。

 去年の冬、祖母がオリヅルランの鉢植えを表に出したまま忘れてしまいました……春になったとき、オリヅルランはちゃんと生きていました。オリヅルランは平凡でつまらないと言う人もいますが、そんな気まぐれな声には耳を貸さず、困難をおそれず立ちむかい、戦いつづけたのです。その精神はすばらしいと思います。

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