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動物の知力

MARCH 2008


 「チンパンジーが道具を作るとわかったとき、人々は驚きました」と、行動生態学者のアレックス・カチェルニクは話す。チンパンジーは、アリ塚からアリを取り出すのに、ワラや小枝を加工した道具を使う。「それでも、人間と共通の祖先をもつチンパンジーが賢いのは当然だろうと、誰もが考えました。ところが、一部の鳥類にも、こうした行動がみられることがわかってきたのです。鳥と人間の共通の祖先は、最新でも3億年以上前にいた爬虫類だというのに」

 カチェルニクは続ける。「これはとても重要です。進化の歴史の中で、似たような高度な知能が、別々の系統に出現したことを意味するからです。もはや、霊長類や哺乳類だけが特別だとは言えなくなりました」

ニューカレドニアカラスは釣り名人

 カチェルニクらは、こうした賢い鳥の一種、ニューカレドニアカラスを調べている。道具を作ったり使ったりする鳥の中でも、このカラスは特にすぐれた技術をもつ。小枝や葉っぱの軸を加工して、ヤシの木のてっぺんから差し込み、中に潜む大きな虫を釣りあげるのだ。

 ニューカレドニアカラスには、道具を単に使うだけでなく新たな工夫を加える能力、研究者が言うところの「知的柔軟性」があるのだろうか。ちなみに野生のチンパンジーは、大きさの違う4本の小枝を使い分けて、ハチの巣から蜂蜜をすくい出すという。

 このカラスは人に対する警戒心がとても強いので、答えを出すのは容易でない。野外での観察は何年も続けられているが、いまだに結論は出ていない。道具を作ったり使ったりする能力は、もともと備わっているのか。それとも、仲間の行動をまねて学習するものなのか。遺伝的な能力だとすれば、チンパンジーと同様、能力を柔軟に使いこなせるのだろうか。

 答えを求めて、カチェルニクは学生たちとともに、23羽のカラスを飼ってみた。4羽いたヒナはみんな、成鳥から厳重に隔離されたため、道具の使い方を教わる機会はなかった。それでも、成鳥になると、例外なく小枝を拾い、木の穴を探ったり、いろいろな材料を加工して幼虫釣りに使うようになった。「これで、道具を使う能力の土台は遺伝的なものだとわかりました」とカチェルニクは言う。「となると次の問題は、道具で別のことができるかどうかです」

 カチェルニクは、ニューカレドニアカラスのベティを撮った実験のビデオを見せてくれた。ベティは野生から捕獲されてきたカラスで、先日、残念ながら感染症で死んでしまった。実験では、ガラスの筒の中に肉片を入れた小さなかごを置き、室内の別の場所に針金を2本置いた。1本は先端が釣り針状に曲がったもの、もう1本はまっすぐな針金だ。事前の予想では、ベティは釣り針状の針金をかごの持ち手に引っかけて、かごを釣りあげると考えられた。

 だが、予想外の出来事が起きた。別のカラスが、先に釣り針状の針金を持ち去ってしまったのだ。ベティはかごの中の肉を見てから、まっすぐな針金に目をとめた。針金をくわえると、一方の端を床の割れ目に突っ込んで固定し、他方をくちばしで曲げて釣り針状にした。それを使って、みごとかごを釣りあげたのである。

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