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特集

動物の知力

MARCH 2008


アレックスの英語学習法

 ペパーバーグが席を立って鳥かごに近づくと、アレックスはくちばしを開けた。

 「ブドウ、ホシイ」
  「まだ朝食をあげてないので、ちょっとご機嫌ななめなんです」とペパーバーグ。

 助手がブドウとサヤインゲン、薄切りにしたリンゴとバナナ、トウモロコシを容器に入れた。

 忍耐強い指導のかいあって、アレックスは発声器官である鳴管を使って、100語近い英単語を発音できるようになった。朝食に出された食べ物の名前もすべて言えるが、リンゴのことは「バネリー」と呼ぶ。

 「味はバナナっぽくて、見た目はちょっとチェリーみたいな果物―そんな意味で、アレックスが考えた造語なんです」

 数も1から6まで数えられるようになり、今は7と8を練習中だという。

 「7も8も、もうわかっていると思います。たぶんもう10までは数えられるでしょうが、発音はまだ練習中なんです。音によっては、教えるのにかなり時間がかかるものもあるんです」

 朝食がすんでも、アレックスはときどき身を乗り出すようにして、くちばしを開け、声を上げていた。「ス、ス、セ……ウン」

 「よくできたわ、アレックス」。ペパーバーグがほめる。「セブン。その数はセブンよ」
  「ス、ス、セ……ウン! セ……ウン!」
  「鳴管をどう使ったら正しい音が出せるか考えながら、自分で練習しているんです」

 鳥が人間の言葉の手ほどきを受け、その上、自主的に練習もするなどと言われても、ちょっと信じられないかもしれない。だが、アレックスという実例を目のあたりにし、その声に耳を傾ければ、納得がいく。ご褒美の餌をもらえるわけでも、かぎ爪をたたかれて強制されるわけでもない。それでも、あくまで自分から繰り返し音をまねようとする。

 ペパーバーグは、アレックスにセブンという言葉を何十回も言って聞かせた。「繰り返し聞いて初めて、正確にまねできるようになるんです。私たちは、アレックスが人間の言葉を覚えられるかどうかを調べようとしているわけではありません。言葉をまねる能力を利用して、鳥のもつ認知能力を探りたい。当初からそれが狙いでした」

動物の認知能力を探る

 鳥が世界をどう見ているか、初歩的な質問をする準備は整った。アレックスにいきなり、何を考えているのか聞くのは無理でも、数や形、色の識別についての問答ならできる。ペパーバーグは実際にやってくれた。まず、棚のかごから緑の鍵と緑の小さなカップを出し、アレックスに見せて聞く。

 「何が同じ?」

 アレックスは迷わずにくちばしを開けた。

 「イ、ロ」
  「何が違う?」
  「カタチ」

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