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ゴリラの家庭学

FEBRUARY 2008


 ゴリラは次の亜種に分類される。ニシゴリラのニシローランドゴリラとクロスリバーゴリラ。ヒガシゴリラのマウンテンゴリラとグラウアーゴリラ、そしてブウィンディゴリラだ。

 ルワンダ、コンゴ共和国、ウガンダの3国の国境が交わるビルンガ山脈には主にヒガシゴリラがすんでいる。一方、海抜約100メートルの湿地の多い森にすんでいるのが、キンゴたちを含むニシゴリラだ。

 同地のゴリラの正確な生息数は明らかではないが、急激に減少しているのは確かだ。1990年代には約10万頭と推測されていたが、エボラ出血熱のウイルスや生息地の破壊による大打撃を受けて、今では半分以下に減ったといわれている。2007年9月には、IUCN(国際自然保護連合)の指定する絶滅危惧種の中で、「ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種」から、最も危機度が高いランク「絶滅の危険にひんしている種」に引きあげられた。ニシゴリラは世界中の動物園で飼育されているが、皮肉にも、野生の生態についてはまだあまり多くはわかっていない。

 ドラン=シーヒーは、同じゴリラの仲間でもニシローランドゴリラはビルンガ山脈にすむマウンテンゴリラなどとは食べ物が違うはずだと考えた。そして、その採食行動が生態にどのような影響を与えているかを探るべく、ここコンゴ盆地にやってきた。高地の寒冷な気候のもとで体温を保つ必要のあるマウンテンゴリラの体には、太くて長い、黒色の体毛が密生している。一方、低地に暮らすニシローランドゴリラの毛は、細くて短い。頭部の毛は茶色がかっていたり、鮮やかな赤色をしている。

 彼らを観察するためには、まず人間の存在に慣れさせる必要がある。内気でとても用心深いゴリラは、数少ない天敵である人間に出くわすと、一目散に逃げてしまうからだ。ドラン=シーヒーと彼女の仲間がキンゴの群れの居場所をつきとめ、それぞれのメンバーに名前をつけ、追尾できるようになるまでに6年の歳月を要した。群れから信用されたと実感できたのは、さらにその2年後だった。

 「アカ・ピグミーがいなければ、この研究は不可能でした」と、ドラン=シーヒーは語る。「彼らは森をよく知り、ゴリラのことを理解しています。彼らのトラッカーとしての卓越した能力は、原生の森の中でゴリラを追いかけて群れに近づくためには、必要不可欠です」

 人類学の修士号をもつコンゴ人研究者、パトリス・モンゴは現在38歳。根気強い性格の男だ。モンディカでの研究プロジェクトのまとめ役を務め、トラッカーの監督をしている。「キンゴ」とはアカ族の方言で「声」を意味すると教えてくれたのはモンゴだ。「アカ・ピグミーのトラッカーたちは、姿が見えなくても、キンゴが発する独特な声と、区域内にすむほかのシルバーバックたちの声との違いを聞きわけることができました。そのおかげで、最初から迷わずキンゴの群れに近づくことができたのです。キンゴは、腹の奥底から響いてくるような、重く深いうなり声を出します」

 以前から研究者たちの間でも推測されていたが、観察を始めて間もなく、ドラン=シーヒーはニシゴリラとマウンテンゴリラの食性の根本的な違いを目の当たりにした。マウンテンゴリラが食べるのはほとんどが地面に生えている草だが、ニシローランドゴリラの食物はもっと変化に富んでいる。果物、木の葉、草のほかに、シロアリ、ゴンベの葉、そして種類によっては樹皮も食べる。季節によっては食事の60~70%が果物のこともあるという。

 ニシゴリラは通常、好物の果物などを探して毎日およそ2キロ歩く。これはマウンテンゴリラの移動距離の約4倍だ。このように食物を探して広範囲を歩きまわる生態は、家族内の社会関係にも影響していると、ドラン=シーヒーは考えるようになった。ニシローランドゴリラはマウンテンゴリラより独立心が強く、互いに親愛の情をみせたりはするが、毛づくろいし合うといった身体の接触はほとんどみられない。独りで過ごす時間が多いため、雌や時には子どもまでもが、シルバーバックの目が届かない所へ行ってしまうことがある。

 その朝、トラッカーたちはジャングルを素早く移動していた。幼い頃から森に慣れている彼らは身のこなしも軽やかだ。「彼らはほんの小さな、たった一枚の葉っぱが裏返っているのも見のがさず、ゴリラが進んだ方向をつきとめるの」と、ドラン=シーヒーが教えてくれた。

 私が一番年長のトラッカーについて歩いていると、彼は突然立ち止まり、ひざまずいて一枚の葉を拾い上げ、地面を指差した。湿った土には拳の跡がかろうじて残っている。彼はそっと舌を鳴らし、続いてもう一人のメンバーが音程を変化させながら3回舌を鳴らした。研究者が自分たちの存在をゴリラに知らせるために考え出した簡単な言語だ。追尾隊は互いに軽く舌を鳴らして意思疎通しながら、複数のけもの道を進んでいた。10分ほどすると一本の道に集結し、一列になって早足で進み始めた。それからさらに5分後、ゴリラの群れを発見した。

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